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DNAの展覧会鑑賞記録帳
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鑑賞日 2009年6月28日(日) 
会 場 国立新美術館
会 期 2009年6月24日(水)~ 9月7日(月)
入場料 一般1500円、大学生1200円 高校生700円
図 版 2300円
公式HP http://www.tokyo-np.co.jp/event/lalique/

約2ヶ月前に国立東京博物館で開催されたカルティエ展を鑑賞したばかりだが、まるで違う印象に驚いた。カルティエの宝飾品がプラチナを中心とした貴金属と宝石の競演であったとすれば、ルネ・ラリックの宝飾品は金・エナメル・ガラス・オパールや真珠といった有機的な宝石の調和であると感じた。
19世紀末ヨーロッパにジャポニズムが流行する。日本が鎖国を解き海外との交流を広げ、西洋の文化を貪欲に吸収した時代は、同時に日本美術の素晴らしさに西洋が衝撃を受けた時代でもあったのだ。
今回の展示は宝飾品とガラス工芸との2部構成になっている。ラリックは芸術家でありながら優れた企業家でもあった。生涯の前半は宝飾品製作者として、後半はガラス工芸家、ガラス作品製作企業家として独自路線で成功する。
加速化する近代化と芸術の大衆化の時代にあって、自らの美を追求したラリックの生き様はとても興味深い。
まだ会期が始まったばかりで人も少なくゆっくり見ることができた。TVなので宣伝が入ると人が増えるので、ゆっくり見たい場合はお早めにどうぞ




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鑑賞日 2009年6月21日(日) 
会 場 横浜美術館
会 期 2009年6月12日(金)~ 8月31日(月)
入場料 一般1400円、大学高校生1100円、中学生800円 
図 版 2500円
公式HP http://www.france19.com/

電車の中でアングルのヴィーナスとマネのカルメンの絵が並べられたポスターを見かけて、面白そうだと興味を引かれた。ネットで検索をかけたところ、19世紀のフランス絵画の真実に光を当てるという、野心的な展覧会であることがわかった。これはいくしかない。しかも、今日はこの展覧会の監修者、東京大学教授、三浦篤氏の記念講演があると言うではないか!!ますますもって行くしかない!

日本で西洋絵画で知っている画家の名を上げてくれと言ったら、多分、ルネッサンス期か、印象派の画家の名が真っ先に上がるだろう。ちょっと美術に興味があったりすると、レンブラントやフェルメール、ルーベンスあたりも出てくるだろう。しかし、そのくらいまでが限界。まあ、20世紀の画家だって、ピカソ、モジリアニ、マチス、ダリとかではないだろうか。

鎖国をしていた日本人が本格的に西欧諸国と交流を持ち始めたのは、ペリー来航(1853年)以降である。もちろん、鎖国をしていたと言っても、日本の上層部はちゃんと情報収集を行っていて、世界情勢についてある程度の理解はしていたようだ。それに、日本から輸出された工芸品はヨーロッパ諸国で珍重され、両者が全く隔絶されていたわけではない。
それでも、実際に人と物が大量に行きかうようになったのは、明治維新(1868年)後である。要するに、日本人が実際に生きた人間とともに受け入れることになったヨーロッパ文化は、19世紀後半のものだったのだ!

その割には、日本でなぜ19世紀アカデミズム絵画はあまり知られていないのか?このところバロック・ロココ・新古典主義あたりの美術に凝ってきた私の感想としては、ずばり、日本人には西洋絵画の本流の素養がなかったからだと思っている。西洋絵画の本流は長い歴史に裏付けられたキリスト教やギリシア・ローマ神話・古典文学などの下地がなければ読み解くのが難しい。絵画に描かれた主題そのものがわからなければ、その絵を理解し楽しむことは難しい。そして、もうひとつ、文化の成熟度が国家の力を表すバロメーターとして捕らえられているヨーロッパに比べ、日本では文化水準で国の優劣を競うという考えがなかった。

明治以降官展が開かれるようになったが、日本で国家権力が絵のコンクールなんて開いたことはない。狩野派のようなお抱え絵師というものはいたけれども、国家事業として優れた絵師を育てようという発想はなかった。日本の歴史の中で政治と絵画が関係したとすれば、平安時代の貴族文化のなかの絵合わせぐらいなものじゃないだろうか?それだって、日本の宮廷内だけのことであり、他国の宮廷と張り合うためではない。

日本で絵画の楽しみといったら私的な空間においてであって、公的空間での絵と言ったら障壁画くらいか?壮麗な宮殿をこれでもかと国家の威信を表現するような絵画で飾り立て、おらが国はこんなにすごいんだぞ!!といわんばかりに主張することを目的とした絵なんて、日本にあっただろうか?あったとすれば、桃山時代くらいかなあと思う。朝鮮通信使との交流とかを見れば、まるでないわけじゃないけれど、ヨーロッパほどの熾烈さは感じられないし・・・・。

印象派の絵は国家の威信なんてまるっきり背負っていない。美しい自然や市民生活を描いた小さな絵がほとんどだ。そして印象派自体がジャポニズムの影響を受けている。

そう考えると、19世紀絵画の本流について、日本人はほとんど知らなかったといえるだろう。今でこそ19世紀以降の新しい絵画の歴史を作ったように思われている印象派だけれども、連綿とヨーロッパ絵画の歴史を受け継いできたアカデミスムなくしてありえたのだろうか?

その問いに、今回の展覧会はひとつの答えを与えてくれたような気がする。古い物を否定するのは簡単だ。しかし、豊かな土壌なくして花が咲かないように、積み重なった歴史の上にこそ、新しい物が芽生えてくるような気がする。否定されてもなお、優れたものはやがて再評価され、その価値を認められていく。音楽でも文学でもそれは何度となく繰り返されている。

今回の展覧会はそういった意味でとても見ごたえがあり、面白いものだった。最近、西洋絵画の主題を解説した本などをよく見かけるようになった。日本人と西洋絵画の距離が近くなった証拠かもしれない。単に画面描かれた像を楽しむ事から、主題を理解し、それをどのように表現しているかまでを含めて楽しむということを求めるようになってきたのだろう。

本当に最近の展覧会は面白い企画がどんどん出てくる。これからも楽しみは続く!!




鑑賞日 2009年6月6日(土) 
会 場 東京都庭園美術館
会 期 2009年4月16日(木)~ 7月 5日(日)
入場料 一般1000円、大学生800円、小中高生500円 
図 版 2500円
公式HP http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/catherine/index.html

18世紀は女性の世紀とも言われている。なぜか?オーストリアのマリア・テレジア、フランスのポンパドール侯爵夫人、そしてロシアのエカテリーナ2世が競い合ってヨーロッパの政治・経済・文化に大きな影響を与えているからだ。この三人の女性はそれぞれに個性的で実に面白い。マリア・テレジアは当時の王族としては奇跡的な恋愛結婚をし、夫一筋で16人も子供を産んでいるし、ポンパドール侯爵夫人はルイ15世の公的寵妃(公が認める愛人!!いかにもおフランス~。)だし、エカテリーナ2世はぼんくらな夫ピヨートル3世を追放して自らが帝位につき、寵臣を愛人にしていたっていう人なのだ。

この3人の女性たちは学校を設立したり、産業の振興育成に力を尽くしたり、なかなかのやり手。更に当時各国間で断続的に行われていた戦争を、この3人は何とか押さえ込む事に成功する。所謂ペチコート同盟ってやつだ。

この頃の外交は今の外交と大分趣きが違ったらしい。当時、国力はどれだけ文化水準が高いか、成熟度が高いかという事で計られたらしい。だから外国からの客人をもてなすときにはそりゃあもうお祭り騒ぎだったのだ。大掛かりな仕掛けを作ってのバレエやオペラ、豪華な飾り付けをした食卓に美食を並べた晩餐会、華やかな衣装での舞踏会。これらは単なるお接待ではなく、まさに示威活動だった!素晴らしい舞台は弾道ミサイル、素晴らしい磁器食器で供される食事は装甲車、煌びやかな舞踏会は戦闘機、のようなものだったのだ!

エカテリーナ2世はもともとはドイツの田舎の片田舎の貴族の娘だった。母方の又従兄(傍系6親等に当る。祖父母は兄弟姉妹の孫世代どうし。)のピョートル大公(皇太子)と結婚しロシア大公妃(皇太子妃)となった。エカテリーナさん、肖像画を見ても、いかにも「私はやります!!」という力強い意思を感じさせるお方。実際、ぼんくらな夫をさっさと押しのけて、女帝になるや、法体系の整備や福祉教育政策に力を入れ、いっきにロシア帝国の文化的政治的地位を押し上げたのです!

今回の展示は、そのエカテリーナ2世が所有していた四大ディナーセット、つまり、文化水準を競い合う場面での武器ともなったものなのだ。
晩餐会は戦場なんです!貧相な武器では相手に舐められてしまう。一方、自国窯の素晴らしい磁器のディナーセットを贈ることは、外交の駆け引きの手段ともなったのだ。ヨーロッパで磁器が作れるようになったのは18世紀になってから。自国で磁器生産が出来るって現代で言えば超最先端技術を持っているっていうことだったわけです。

だからこそ、エカテリーナ2世は当時の技術を競っていた各国の名窯にディナーセットを作らせ、プロイセン王フリードリヒ2世はディナーセットを贈ったのだ。ディナーセットには食器だけでなく、様々な食卓の飾りつけ品も含まれている。宮廷の食卓は単なる食事の場ではない。そう考えると、当時の晩餐会というのは、なかなか気骨の折れるものだったのではないだろうか。

展示品は食器好きさんにはたまらないです。4つのセットは以下の通り

ベルリン王立磁器製作所で製作された《ベルリン・デザート・セルヴィス》これはプロイセン王フリードリヒ2世が露土戦争の戦勝祝いに贈ったもの。

セーブル窯の《カメオ・セルヴィス》寵臣ポチョムキン公(愛人でほとんど夫同然)の為に注文されました。当時流行り始めていた新古典主義が反映されたカメオ柄と明るい青が特徴です。

ウェッジウッドの《グリーン・フロッグ・セルヴィス》これは彼女のお気に入りの離宮で使われたもので、当時のイギリス趣味(アングロマニー)の流行にマッチし、更に、フリードリヒ2世が《ベルリン・デザート・セルヴィス》を注文した時に、プロイセンの宮廷・領地・公園の風景画を描いた別のセットを自分用に注文していましたことに対抗するように、イギリスの風景画を描かせている。緑色の蛙の紋章がついていて、ユーモラスです。

ロシアも勿論王立の磁器製造所を持っていました。《聖ゲオルギー・セルヴィス》はモスクワ近郊のフランツ・ガルドネルの民間工場で作られた後、サンクトペテルブルク帝室磁器製作所で追加作品を制作されたもの。エカテリーナ2世は自分の支配体制を支える軍人達を大切にしていました。ロシアの最高位の勲章は「聖ゲオルギー勲章」、「聖アレクサンドル・ネフスキー勲章」、「聖アンドレイ勲章」、「聖ウラジミール勲章」と4つあり、この勲章を授与された者の祝宴には必ず出席していたそうです。「勲章セルヴィス」はこの祝宴で用いられていました。他のセットに比べるとちょっと素朴な感じがあります。


単に展示ケースに収められたものだけではなく、実際にテーブルにセッティングされた形で展示されています。日本の宮家の邸だった建物の中で、宮廷で使われた食器が展示されていると言うのは、なかなかオツな演出です。

会期はもう少しありますし、美術館の庭を散策するのもたのしいです。
一粒で三度おいしい展覧会と言えるでしょう。
鑑賞日 2009年5月10日(日) 
会 場 新国立美術館
会 期 2009年3月25日(水)~ 6月 1日(月)
入場料 一般1500円、大学生1200円、高校生800円 小中生 無料
図 版 2500円
公式HP http://www.asahi.com/louvre09/index.html

この春はルーブル美術館から2つの企画展がやって来た。ひとつは国立西洋美術館で、もうひとつが、この新国立美術館でのものだ。どちらもとてもいい企画だと思う。
昔はどれだけ有名な作品があるかということが話題になったように思うが、最近は、どれだけ面白い企画かということが話題になるようになってきたように思う。日本人が海外に出かけていく機会が増え、テレビや書籍、インターネットなど様々なメディアから海外の情報を豊富に得ることができるようになったことが大きいと思う。ただ有名であるというだけでは飽き足らない人々が確実に増えているのだろう。
今回のテーマは「美術のなかの子供」。ルーブル美術館の膨大な収蔵品のなかから、「子供」を題にとった作品を、古代から近代にいたる様々な地域のものを一堂に集めている。
子供に対する様々な感情は、時代や地域を越えて共通するものが多い。数千年前の人々も、小さな子供の愛らしい仕草に心を慰め、その命がはかなく散れば、悲しみにくれたのだ。
人間の変わらない心の動きが写しだされた品々は、とても興味深く、心を和ませてくれた。
日曜の午後ということで、混雑を予想していたがゴールデンウイーク直後の日曜だったせいか、さほど混雑もせずゆっくり楽しむ事ができた。
今回、一番嬉しかったのは、シャルダンの「食前の祈り」が出展されていたこと。この作品は作家からルイ15世に献上されたものという。ブルジョアの日常の一こまを描いたこの作品をルイ15世は気に入っていたという。5歳で王位についた王様は案外こんな穏やかで暖かな家庭に憧れていたのだろうか?などとおもってしまう。そのルイ15世の9歳の姿を写した胸像などもあった。
会期はあと半月あまりだが、子供づれでも楽しめる展覧会だと思う。


鑑賞日 2009年5月7日(木) 
会 場 東京国立博物館 平成館
会 期 2009年3月31日(火)~6月7日(日)
入場料 一般1500円、大学生1200円、高校生900円 小中生 無料
図 版 2500円

阿修羅は仏法を守護する8部衆の一人である。古代インドの武闘神が仏教に帰依しその守護者になったものとされる。通常は三面六臂に表される。
興福寺の阿修羅像はその少年を思わせる清しい姿で特に人気がある。今回の展覧会は興福寺中金堂の再建事業の一環として企画されたもので、八部衆像(国宝)、十大弟子像(国宝)、中金堂基壇から発見された1400点をこえる鎮壇具(国宝)や、薬王・薬上菩薩立像(重要文化財)、四天王立像(重要文化財)など、約70件を展示されている。
八部衆も十大弟子像も実に清らかな造形で、1200年以上前のものとは思えない。神仏を象ったものなのに、猛々しくも超人的でもない。繊細で柔らかで清らかだ。仏師たちは何を思ってこの像を作ったのだろう。
興福寺はその長い歴史の間に焼失と再建を繰り返している。燃え盛る炎からこれらの像を助けだした人々は、いったい何を思ったのだろう。歴史の中に埋もれてしまった人々の声は聞こえてこない。ただ、現代まで伝えられた姿に相対したとき、心の中に不思議な静けさが満ちてくる。それがなんなのか、上手く表現することは出来ないけれど、とても穏やかで暖かな気持ちであることは確かだ。
八部衆像(国宝)、十大弟子像(国宝)が揃って寺外で公開されたのははじめての事だそうだ。
関東から奈良までは遠い。せっかくお運びいただいた仏様がたに、会いに行かれてはどうだろうか。



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