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DNAの展覧会鑑賞記録帳
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鑑賞日 2007年11月18日(日)
会 場 サントリー美術館 
会 期 2007年11月3日(土)~12月16日(日)
入場料 一般1300円、学生(高校生・大学生)1000円
図 版 2300円(エコバック付)

 12世紀に日本はすでにマンガ大国だったのかも知れない。平安時代に絵巻がたくさん作られた。『源氏物語絵巻』『信貴山縁起絵巻』『伴大納言絵巻』そして『鳥獣人物戯画絵巻』、これらは四大絵巻と呼ばれている。
 もともと絵巻は中国の画巻が起源であるが、最初の絵巻は奈良時代の『絵因果経』だといわれている。平安朝時代の国風化の中で物語・説話などを題材に独自の発達を遂げてきた。詞書と対応する場面の絵で構成される絵巻は、当時の人々の生活を現代人に教えてくれるとともに、絵と物語を同時に鑑賞するスタイルが、古くから延々と受け継がれた日本人の特徴的な楽しみ方である事を示している。
 『鳥獣人物戯画』には詞書がない。もともとなかったのか、それとも、途中で失われてしまったのか、はっきりしたことはわかっていない。詞書はないが、この絵巻は絵そのものが非常に雄弁で、文句なく楽しめる。おそらく、私が言うもでもなく、蛙や猿、兎や狐が繰り広げる人間くさい活劇を誰もが目にした事があるだろう。
 今回の展覧会はなんと、『鳥獣人物戯画』4巻が揃っているだけでなく、住吉家伝来の模本と長尾家旧蔵の模本、断簡4点がそろえられている。一時に見られるチャンスはそうは無い。そのほか、鳥獣戯画を生み出した背景として、同時代の年中行事絵巻(模本)や白描(墨の線描画のことをいう)の仏画、ユーモアあふれる物語絵巻などが展示され、『鳥獣人物戯画』を立体的に楽しませてくれる。
 日曜日ということもあり、かなりの混雑だった。絵巻物はタブローのように壁に掛けるわけに行かないからだ。壁際に張り付いて列に並び、よちよちと歩いていくしかない。点数が多いわけではないので、気長に流されていけば、鑑賞は出来る。
 それにしても、筆の線というのは味わいがある。緩急をつけた線だけで、動物の柔らかな体や、毛皮や皮膚の質感まで感じさせる。ほんの僅かの線や点が、動物たちの生き生きとした表情を生み出している。線描の表現力の奥深さを改めて感じることができた。
 もうひとつ、展示作品で日本人のおおらかさを感じるものが2点あった。思わず、にやりとしてしまうものだ。まったくもう。笑うしかありません・・・。
 六本木ミッドタウン内ですから、買い物ついでに立ち寄られてはいかがでしょうか。
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鑑賞日 2007年11月15日(木)
会 場 東京都美術館 
会 期 2007年10月10日(水)~12月24日(月)
入場料 一般1500円 大学1200円 高校800円
図 版 2500円

 今日、ひとつ年をとった。もともと誕生日に特別な思い入れがあまり無い。ましてやこの年になると、自分の年をあまり数えたくないものだ。
 今日は友人たちとの定例会で、いつもの場所でランチを食べながら日ごろ溜め込んでいた憂さを晴らし、散会後一人で展覧会場へ向かった。上野公園の大噴水を取り囲む木々はすでに黄色や赤に色付き、秋の深まりを感じさせている。上野公園の大噴水越しに東京国立博物館の本館を見るのが好きだ。今日のように穏やかな日には特に美しい。

1776年7月4日フィラデルフィアでアメリカ独立宣言がなされた。フィラデルフィアはアメリカ合衆国誕生の地といえる。1876年独立100周年を記念に開かれた、アメリカ初の万国博覧会での美術品展示の為に設計された建物が、翌年から美術館として使用されたのがフィラデルフィア美術館の始まりだそうだ。この美術館に所蔵されている作品の多くは個人コレクターからの寄贈品だそうだ。建国の地に立つ美術館に所蔵品を寄贈するのはコレクターとしても非常に名誉なことだったのだろう。
 さながら美術史の教科書のような展覧会だった。コローに始まりワイエスまで、19世紀~20世紀の有名な画家、彫刻家のオンパレードである。44作家全77作品を見終えたとき、19世紀~20世紀の美術史の流れを駆け足で走り抜けたような錯覚を覚えた。
 その中で、ひときわ輝いて見えたのは、ピエール・オーギュスト・ルノワールの4点だった。私の美術展デビューは1972年に開催されたルノワール展だった。初めて生で見た西洋絵画がルノワールだったことは、私にとってとても幸運だったと思う。ルノワールの絵は、明るく明快で、人の持つ命の輝きを手放しで賛美する絵だからだ。ばら色の頬をした少年少女、豊かな量感と輝く肌を持ち、柔らかく息づく女性の体から感じるのは、ただただ生きる喜びだ。ルノワールの絵は、私に絵とは美と喜びを教えてくれるものという強烈な刷り込みを与えた。
 今回出展されているルノワールの作品はとれもすばらしかった。『ルグラン嬢の肖像』は、清楚で愛らしい少女の肖像画だ。恥らうように画家から視線をはずしているが、その目元にも口元にも少女らしい好奇心が浮かんでいる。今にも画家に視線を合わせ、「ねえ、私のポーズはこれでいいのかしら?どんな風にお描きになるの?」と話しかけてきそうだ。首に巻かれた青いスカーフ、胸元に光る金色のロケット、肩のところにリボンがあしらわれた黒いエプロンが、少女の白い肌とふわふわと肩にかかる柔らかな髪をいっそう引き立てている。「アリーヌ・シャリゴの肖像」は彼の妻の肖像画だ。どれだけルノワールが彼女を愛したか、一目でわかる。彼はこの絵を生涯そばに置いていたという。長男ピエールを産んだ夏に描かれたものだというが、ふっくらと豊かなばら色の頬、まろやかでゆったりとした肩のライン、豊かな胸元、膝の上で重ねられたむっちりとした手。小さなつばの麦藁帽子にはピンク色の花が飾られ、額には栗色の巻き毛が無造作にかかっている。何よりその若妻の表情がすばらしい。夫に向けられたそのまなざしはやわらかく、暖かく、そして信頼に満ちている。
見ているだけで本当に幸せになれる。そして、「大きな浴女」。この絵こそ間違いなくこの展覧会の目玉作品である。なんという美しい絵なのだろう。現代は肉付きのいい女を否定する。だが、この絵を前にしたら、世界一のトップモデルと言えども、なんと貧相に見えることだろう。輝くようなやわらかい肌、溌剌とした丸い乳房、豊かに張った腰、はちきれんばかりの太もも。骨ばったところのひとつもないふくふくとやわらかい指先に掻き揚げられた明るく輝く豊かな髪は、女性の持つやさしさ、しなやかさ、暖かさを余すところなく表現している。見るものをいざなうように向けられた瞳はひたすら優しくて、おおらかで、慎ましやかだ。体を惜しみなく晒しながら、ひとつも媚がない。この体は命そのものであり、自然そのものだ。最後まで見終わって、もう一度、この絵の前に戻らずにはいられなかった。まさしくルノワールの傑作だと思った。もう一点「レース編みをする少女」は静けさの中に緊張感のある絵だ。一心に手元を見つめレース編みをする少女の表情は真剣そのもの。明るい色調の中に、手仕事に熱中する少女の息遣いが聞こえてきそうだ。ルノワールは晩年関節炎を患い手が不自由になってしまう。それでも、ルノワールはその死の直前まで絵筆を取っていた。ルノワールは心底描くことが好きだったのだと思う。
 今回の展覧会でもうひとつお勧めなのはジョージア・オキーフの「ピンクの地の上の2本のカラ・リリー」。画面いっぱいに描かれた2本のカラ・リリーの花は、微妙な色の諧調をもち、とてもなまめかしい。花とは植物の生殖器だ。新しい命を生み出すための器官をなぜこんなに美しいと感じるのか。クローズアップで花を見たとき、人はそれを美しいと思うだろうか。拡大された花弁の脈やおしべ・めしべのディテールは実はとても生々しく・時に猛々しくさえある。この絵はオキーフ自身が否定しているにも関わらずエロティックなものと解されている。花はもともとエロティックなものなのだ。彼女はただ花をあるがままに拡大して描いただけかもしれない。だが、忠実に描いたからこそ、人はそこに深いエロティシズムを感じてしまうのかも知れない。この絵もぜひ見て欲しい。
 会期はクリスマス・イブまで。流れを楽しむも良し、1点を楽しむも良しの展覧会だと思う。

鑑賞日 2007年11月11日(日)
会 場 国立新美術館 
会 期 2007年9月26日(水~12月17日(月)
入場料 一般1500円 大学1200円 高校800円
図 版 2300円

 ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer, 1632年10月31日-1675年12月15日)は、レンブラントと並び17世紀のオランダ美術を代表する画家である。非常に寡作な画家で、現存する作品は僅かに三十数点のみである。なかでも、今回出品されている「牛乳を注ぐ女」は彼の代表作のひとつ。
 展覧会の公式ホームページで混雑状況の傾向案内があり、多少鑑賞しやすい時間ということで、午後4時到着予定で娘と家を出た。思いの他乗り換えが順調いったので、3時半に到着してしまった。会場は入場制限もなく、人の流れに乗っていけば、とりあえず作品が鑑賞できるといった込み具合。フェルメールの代表作の日本初公開という事で、美術館側も対策を考えたのだと思う。「牛乳を注ぐ女」一点の展示に一室を充て、その部屋の前の部屋に絵の解説ボードやビデオ上映モニターを設置し、観客の流れが緩やかになるように工夫されていた。
 風俗画展ということで、画題は人々の生活の場面ばかり。17世紀初頭から19世紀までの人々の暮らしを覗き見ているような楽しさがあった。

フェルメールの「青」は特別な青。ウルトラマリンという顔料が使われている。ウルトラマリンと言うのは、ラピスラズリという貴石から作られる。原料の鉱物が限られた場所からしか産出されないこと(ヨーロッパではアフガニスタン産が使われた)や、鉱物を顔料として精製するのに技術と手間が必要なことから、当時は金以上の価値があったという。ウルトラマリンをこよなく愛した画家として、イタリア・ルネサンス時代のフラ・アンジェリコがいる。この画家の青が天上の青だとすれば、フェルメールの青は地上の青といえるだろう。天上の清らかな世界を「青」で表わしたフラ・アンジェリコに対し、フェルメールは、何の気負いも変哲もない日常の一瞬に、人の営みの永遠性を青によって封じこめたように感じる。厚みのある若い女性の体を包む黄色の上着、広い額を出して、頭を覆う白い頭巾の色はやわらかいのにとても鮮やかで心地よい。ずっと見ていたくて絵の前に出来た行列に3度も並びなおしてしまった。娘も同じ気持ちだったのだろう。文句も言わず一緒に列に並んだ。良い作品はいつまでもその前にたたずんでいたいと思わせる「何か」を持っている。フェルメールの所有者が絵をなかなか世に出してくれない理由がわかる気がする。片時でも作品を手放したくないのだとおもう。形あるものはいつかは失われる。
でも、一瞬の邂逅が永遠にも思える作品なら、多くの人に永遠を感じさせることが出来るなら、それはとても幸せな作品と言えるのでは無いだろうか。
「牛乳を注ぐ女」の部屋を再現したものや、17世紀当時の古楽器、銀の燭台や平鉢、デルフト焼きの皿やガラスのグラスなどの展示があり、工芸品好きの私としては、いろいろ楽しむ事ができた。
 会期はまだあるので、ぜひ足を運んで見てください!
 
 
鑑賞日 2007年11月4日(日)
会 場 埼玉県立近美術館 京浜東北線 
     北浦和駅下車 西口徒歩3分 北浦和公園内
会 期 2007年10月27日(土)~12月16日(日)
入場料 一般1100円 学生700円 
図 版 2300円

 埼玉県立近代美術館にはちょっと懐かしい思い出がある。学生時代に博物館学芸員の資格の取得のための実習を、ここで行ったからだ。まだ開館したてのころで、建物はぴかぴかだった。本当に久しぶりに行ってみると、実にいい具合の古び方をしていた。新築の建物というのもいいが、人間が行きかうことで、建物が人間の精気を吸って人間になじんだ頃合というのも、また味がある。そう思うのは、自分が年をとったせいかとも思うが・・・。
 今日は天気もよく、秋の深まりを感じさせる北浦和公園の木々のたたずまいも美しく、まことに「芸術鑑賞の秋!」といった風情で、入る前から気分が盛り上がる。
 今回の展覧会は「田園賛歌」と題されているとおり、農村の風景と農作業を主題にした近代絵画が集められている。ジャン=フランソワ・ミレーの「落穂拾い(山梨県立美術館蔵)」クロード・モネ「ジヴェルニーの積みわら・夕日(埼玉県立近代美術館蔵)」を始め、ピサロ、シスレー、ゴッホ、ゴーガン、セザンヌ、ヴラマンクなどフランス近代絵画の巨匠たちの作品はなかなか見ごたえがある。さらに、日本の洋画家、日本画家による、日本の農村風景を描いた作品、ポスターや写真に表現された田園風景と本当に盛りだくさんの展示だった。
 都内の美術館と違い、近所にすむ人々が気楽に見に来ているという空気が展示会場の中に漂っているのが、なんともくつろいだ気分にさせてくれる。今回の展示で注目すべきは、展示作品が日本全国の美術館から広く集められていることだ。各地に公設美術館が雨後の筍のごとく作られたのはちょうどバブルのころだった。開館の目玉に有名作品を購入し、その度話題になった。今回出品されているミレーの「落穂拾い」も山梨県立美術館開館の「目玉作品」として購入されたものだ。そのときのTVニュースを今も覚えている。物見高い人々は、その一枚を見るために、バスを仕立てて山梨まで出かけていったのだ。日本人は有名作品に弱い。だが、有名作品が一点だけでは一時はいいが、何度もリピーターを呼ぶことは難しい。各地の美術館はそれぞれの特徴を何とか形作ろうと乏しい予算をやりくりしながら作品を集めて行ったのだろう。20年、30年という時間をかけて、味のあるコレクションが各地の美術館に蓄積されつつあるのだと思う。
美術館が独立法人化し、それぞれが独自に経営について責任を持つようになって、美術館どうしの連携が進められていることを感じる。
 日本人の暮らしが豊かになり、絵画や音楽を楽しむことが日常の楽しみとなった。最近は肩肘を張っての鑑賞ではなく、自然にそれぞれの感性にしたがって楽しめるようになってきているように思う。美術館がその地域の憩いの場として根付いてきていることを、強く感じた展覧会だった。
 今回も娘と一緒に出かけたのだが、娘はアルフォンス・ミュシャのポスターの実物にいたく感激していた。私は、ミレーの「落穂拾い」もよかったけれど、ピサロの作品に心惹かれた。明るく暖かな日差しを感じさせる画面はとても豊かな気分にしてくれた。
 芸術鑑賞で目を楽しませた後は、舌とお腹も楽しませようと、美術館内にあるイタリア料理店「ペペロネ」へ。私はトリコロールコース2500円を、娘はランチパスタ1000円をオーダーして二人でシェアしたのだが、なかなかの味とボリュームで大満足。玉葱入りフォッカチャは焼立てでもっちりふかふか。思わずお土産に買ってしまった。手も気もかかる兄の影で、なかなか向き合えない娘と出かける美術鑑賞は、私にとって、非常に楽しい時間である。中学生までは入場料が無料!この特典が使えるのもあとわずか。出来るだけたくさんの展覧会につれていってやりたいと思っている。 


鑑賞日 2007年10月28日(日)
会 場 紀伊国屋画廊(紀伊国屋書店 新宿本店4F
会 期 2007年10月25日(木)~10月30日(火)
入場料 無料 
図 版 無料配布 パンフレット(19P)
         絵葉書3種 フランス革命史画集成 
         クリアファイル 2種   


 専修大学が創立100周年を記念して1977年に購入した「ミッシェル・ベルンシュタイン文庫」の資料を、専修大学創立130年記念事業として公開したもの。日本にフランス革命に関するこんなすごい資料があったとは!本当に驚いた。
 今回、一番うれしかったのは、百科全書の初版本を見ることが出来たこと。ガラスケースに入れられていなかったので、受付にいらした、おそらく専修大学図書館の司書さんと思われる女性にお願いして、装丁の表と、マーブル模様の見返しを見せていただいた。紙質は今の洋紙よりずいぶん荒いわら半紙を少し上等にした程度のものだった。大きさはブリタニカ百科事典を一回り大きくしたぐらいだった。件の女性は、私の質問に丁寧に答えてくださり、とてもうれしかった!
 このほかも、版画に手彩色を施したカリカチュアや人権宣言、アッシニア紙幣など、とにかく、フランス革命に興味のある人間なら、思わず見入ってしまうものばかりだった。
 会期はあと3日ほどだが、興味がある方は是非お出かけください。
 
 11月24日・25に専修大学神田校舎で国際シンポジウム フランス革命研究とミシェル・ベルンシュタイン文庫 が開催されるとの事。

    
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