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DNAの展覧会鑑賞記録帳
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鑑賞日 2007年10月21日(日)
会 場 上野の森美術館
会 期 2007年10月13日(土)~12月11日(火)
入場料 1000円 学生900円
図 版 1500円 3色の装丁から選べます

 私が絵画好きなことを知っている同僚が、招待券を2枚譲ってくれた。シャガールといえばオペラ座の天井画がすぐに思い浮かぶ。鮮やかな色彩と独特の人物や動物が浮遊するような画面が印象的だ。今まで彼の作品をまとめて見た事はなかった。ただ、彼の色彩は一度見ると忘れられないインパクトがある。
 今回はシャガールのリトグラフの最高傑作といわれる《ダフニスとクロエ》、木版画《ポエム》《サーカス》《聖書》《アラビアンナイトの4つの物語》の5シリーズ222点と油彩、パステルなど17点となかなか見ごたえのあるもの。さらに、写真家イジスが撮ったシャガールの製作風景は、非常に興味深かった。画家がどんな風に製作に取り組むのか、なかなかその姿を見ることは出来ない。特にオペラ座の天井画の製作風景には驚かされた。小さなエスキスから大きな下絵、作品製作、作品の設置というまさに製作過程をたどる写真の数々。シャガールとした親しかった写真家イジスのシャガールに向けるまなざしは、尊敬と親愛の情にあふれている。
 今回の展示で一番気に入ったのは《アラビアンナイトの4つの物語》。おおらかな線と鮮やかな色彩で描かれたロマンティックで官能的な絵はとても魅力的だ。彼の絵は心に素直に響いてくる。それはおそらく彼独特の色彩にあるように思う。たとえて言えば、夢の中の色彩だろうか。非現実的な人物や動物や風景でも、夢の中なら素直に受け入れられる。
 現在、上野公園内では各美術館・博物館が一斉に秋の企画展を開催中の為、観客がばらけているのか、館内は空いていてゆっくり楽しむことが出来た。
 この企画展に出品されているイジスの作品は「東京アカデミー」という資格試験対策講座などを開設している専門学校が所有しているものだそうだ。企業や個人が所蔵している芸術作品の総数は日本中ではどれほどのものになるのだろう。願わくばせっかくの作品である。死蔵させずに、人目に触れさせてほしいものである。
 
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鑑賞日 2007年10月14日(日)
会 場 Bunkamura ザ・ミュージアム
会 期 2007年9月2日(日)~10月25日(木)
入場料 1300円 中学生600円
図 版 2000円 

 朝、洗濯物と掃除をやっつけでこなし、娘と二人で11時発の電車にて最寄り駅を出発。恥ずかしながら、Bunkamura ザ・ミュージアムでの企画展観覧は初めてである。シアター・コクーンに1度行った事があるが、渋谷の街はほとんど行った事がない。人が多いところはあまり得意ではないので、乗り換え以外で渋谷駅を利用したこともほとんどない。
娘は渋谷といえば「109」!ということで、帰りに寄っていいからと誘って一緒に出かけた。渋谷駅前は雑多な音に包まれ、人であふれていた。
其の様子に娘は一言「中国みたい・・・。」色とりどりの看板、人波、周りから降り注ぐ雑多な音。活気と喧騒は確かに中国の街にどこか似ていると思った。

 展覧会場は思ったより混雑しておらず、快適な鑑賞が出来た。今回の目玉は、ティツィアーノ・ヴェチェリオの《洗礼者聖ヨハネの首をもつサロメ》 である。ティツィアーノはラファエロと同じころ(15世紀末)に生まれ、ミケランジェロと同じぐらい長生きをした(1576年没)ヴェネチア派の巨匠である。的確で堂々とした人体表現と鮮やかで自由な色彩表現は、ヨーロッパの王侯貴族・教会といった権力者に広く受け入れられ、特に神聖ローマ帝国のカール5世が彼の最大のパトロンであったことは有名である。時代的には、ルネサンス期の画家なのだが、「聖母被昇天(Santa Maria Gloriosa dei Frari 1516-1518)」に見られるようにダイナミックな動きと溢れ出る感情表現は、すでに17世紀のバロック絵画を予感させている。
今回出品されている《洗礼者聖ヨハネの首をもつサロメ》は、初期の作品の傑作のひとつとされている。ヘロデ王の娘、サロメと洗礼者聖ヨハネの物語は、聖書の話というより、ビアズリーの挿絵が添えられたオスカー・ワイルドの戯曲の方がなじみ深いかもしれない。聖書の中のサロメは、ヘロデ王の求めに応じて舞を踊り、ヘロデ王に何でも褒美をやろうといわれて、母親のヘロデヤにそそのかされてヨハネの処刑を求めたという話に過ぎない。
 少なくともルネサンスの時代に「サロメ」の主題は、オスカー・ワイルドが創造したような、サロメがヨハネに恋をして云々という捉え方をされていたわけではない。「サロメ」と似た主題で「ユディト」の話がある。こちらはアッシリアとユダヤの戦争の中で、美しく信仰心の厚い寡婦ユディトが、アッシリアの司令官ホロフェルネスをその美しさで篭絡し、首を切り落として持ち帰りユダヤを勝利に導くという話。聖書の視点から見ればサロメは悪女であり、ユディトは英雄であるのだが、どちらも若い女性と「生首」という組み合わせなので、しばしば混同され、取り違えられてしまう。
 思うに、若い女性と生首というトンでもなく不釣合いなものの組み合わせのこの主題の絵を注文する側も、描く画家も、正直言ってサロメでもユディトでもよかったんじゃないだろうか。きれいな女性が、男の生首を盆に載せて捧げ持つという主題が、いやおうなく醸してしまうエロティシズム。これこそひそかに求められていた影の主題じゃないだろうかと思ってしまう。
 ティツィアーノの描いたサロメは、ヨハネの生首を隠してしまえば、少々憂い気味のただの清純な乙女に見える。だが、ヨハネの生首を露にしたとたん、なんともいえない複雑な妖艶さを帯びて見えるのはなぜだろう。人の心理というのは面白いものだと思う。
 そのほか、今回の展示で気に入った作品は、パオロ・ヴェロネーゼの「キリストと刑吏たち(エッケ・ホモ)」ティツィアーノ?の「混血の少年の肖像」、ピエトロ・ロンギの風俗画とカナレットのベネチアの風景画。娘は特にロンギの風俗画が気に入っていた。
 ヴェネチア派の作品は、しっかりとしたデッサンを重視する人は、物足りなさを感じるかもしれない。しかし、鮮やかな色彩表現や豊かな感情表現を好む人にはたまらない魅力があるように思う。有名作品ばかりでなく
有名作品の周囲にあった流れをともに広く見せてくれる企画展が最近増えてきたように思う。
 西洋絵画に対する理解が少しずつ深まり、単に有名だからというだけでなく、広く美術の流れを楽しむ目が、鑑賞者のなかに定着しつつあることを感じるこのごろである。

鑑賞日 2007年9月20日(木)
会 場 東京都美術館
会 期 2007年8月1日(水)~9月24日(月)
入場料 1400円 
図 版 2300円 

夏休みとして連休を取らず、単発で平日に休みをとり、美術鑑賞にいそしんでいる。昔から、「至宝展」と名の付くものが好きで、○○の至宝展なんてのを見ると、つい行きたくなってしまう。この手の展覧会は、大体がキンキラしているものである。宝石や金銀細工や金襴緞子の衣装。絵や彫刻を見るのも楽しいが、工芸品も又、別の楽しさがある。なんといっても工芸品は生活の匂いがする。化粧道具・アクセサリー・食器・武具・衣装・ミニチュアール(細密画)みんな、生活のなかで使われたものだ。豪華な王宮の中の生活はどんなものだったのだろうと、想像を巡らすのはとても楽しい。
 今回とても興味を引かれたのは、食卓とミニチュアール。折りたたみ式の足に大き目の丸い盆を乗せた食卓はまるで日本のちゃぶ台だった。床に座る生活は同じ発想を生むのだろうか?トプカプ宮殿に、いいミニチュアールがある事は知っていた。実際にこの目で見て、唸ってしまった。正に細密画!色鮮やかな顔料と金で描かれた精緻な表現に唸ってしまう。西洋的な立体感は無いが、的確な線描と繊細な彩色は、非常に美しく生き生きしている。線描の美しさに目がいってしまうのは、やっぱり私が日本人だからだろうか?
 今回の展示はオスマントルコのスルタンの権力とハレム(後宮)の女性たちに焦点を当てて紹介されている。後宮という制度は、キリスト教圏にはない。キリスト教は厳密な一夫一婦制だからである。イスラムの社会機構とヨーロッパの社会機構は異なっていても当然なのだが、従来の世界史の視点はヨーロッパからのものこそ主流とされているように思えてならない。歴史的出来事も、どの視点から見るかによって、その捉え方は大きく違うはずだ。とかく、西洋人的視点に偏りがちな日本人の世界史観だが、そろそろ、もっと多くの視点から歴史を見られるようになってもいいのではないだろうか。
 豪奢な品々に添えられた解説で、なるほどと思ったものがあった。スルタンは豪華な品々で自分の権力の強大さをアピールしたが、それで戦争が避けられるなら、よほどお安いものであると。実際に戦争をすれば、人の命が失われ、たくさんのものが破壊される。膨大な金額の戦費も必要となる。実際の戦争をするよりも、洗練された文化を持って、他国を圧倒する。この考え方が、とても新鮮に思えた。現代はあまりに武力や経済力が外交の前面に出すぎているようにおもう。人間は、もっと、人間らしくお互いを認めあえるのではないだろうかと考えた。
鑑賞日 2007年9月15日(土)
会 場 サントリー美術館
会 期 2007年9月1日(土)~10月21日(日)
    (大阪市立美術館で10月30日~12月16日)
入場料 1300円 
図 版 2500円 

BIONBO=ビオンボとは、ポルトガル語やスペイン語で「屏風」を意味するそうだ。極東の国、日本とヨーロッパはとても離れている。にもかかわらず、日本で作られた屏風が16世紀・南蛮貿易の輸出品として遠く海を渡り、西欧の人々に受け入れられた事実に驚きを感じる。
 最近の美術史の傾向として、屏風や屏風絵を、本来そのものが生み出されて、使われた生活の場に戻し、見直そうという動きがあるという。今回の展示は単に屏風を美術品として捉えるのではなく、生活の中で屏風がどのように使われてきたのかいう視点からも捉えなおされている。
 産屋を設えるために作られた「白絵屏風」は、大変興味深かった。本来その出産1度しか使われない為、文献にはあるものの、一点も残っていないとされていたらしい。長年探し続けて、やっと2点が見つかったそうだ。その1点が今回展示されているのだが、とても不思議なものだった。
屏風は、外交の場で贈り物として常に主要な地位を占めていた。当時の最高の絵師達が描いた最高の屏風が、朝鮮や中国に贈られた。近年では、幕末にオランダ王が蒸気船を贈ってくれた返礼に、幕府から10双の屏風が贈られている。
今回の展覧会のために、海を渡った屏風たちが、多数里帰りしている。さすがに、国の威信をかけて外国に贈られた作品の出来は素晴らしい。

日本人は、自国の文化の素晴らしさになかなか気付かない。日本の美術品が海を渡り、異国の人々を魅了したのだという事実をもっと知っていていいのではないだろうか。
鑑賞日 2007年8月26日(日)
会 場 損保ジャパン東郷青児美術館
会 期 2007年7月14日(土)~9月2日(日)
入場料 1000円 
図 版 2000円 ブックレット500円子供用ブックレット300円

 4月に行った「ぺルジーノ展」でアンケートに答えたら、招待券があたった。日展100年展のあとハシゴ鑑賞。さすがに足の裏がじんじん痛む。
損保ジャパン本社ビル42階にあるこじんまりとした美術館は、あまり人も多くなく、ゆったりと鑑賞できるところが気に入っている。今回は「サーカス展」と銘打たれたように、サーカスを主題にした作品ばかりが集められている。入るとすぐにピカソの版画作品シリーズ・ビュフェ・クレー。ルオー・シャガールなどの小品ながら美しい作品が並び、安井曽太郎、東郷青児、海老原喜之助、長谷川潔、長谷川利行、川西英、恩地孝四郎、瑛九などのサーカスをテーマにした作品が並ぶ。会場にカクテルライトが据えられ、ちょとしたサーカス気分を演出している。
 全体にこれこそ目玉だと言うような作品はなかったが、1つのテーマで集められた作品たちの見ごたえは十分。特に気に入ったのはピカソのエッチング。迷い無くひかれた簡潔な線が、なんともいえぬ哀愁と家族のぬくもりを感じさせてくれた。
 今回もアンケート用紙を出したが、次回「ベルト・モリゾ展」チケットが当たるだろうか・・・・?
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