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DNAの展覧会鑑賞記録帳
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鑑賞日 2007年10月14日(日)
会 場 Bunkamura ザ・ミュージアム
会 期 2007年9月2日(日)~10月25日(木)
入場料 1300円 中学生600円
図 版 2000円 

 朝、洗濯物と掃除をやっつけでこなし、娘と二人で11時発の電車にて最寄り駅を出発。恥ずかしながら、Bunkamura ザ・ミュージアムでの企画展観覧は初めてである。シアター・コクーンに1度行った事があるが、渋谷の街はほとんど行った事がない。人が多いところはあまり得意ではないので、乗り換え以外で渋谷駅を利用したこともほとんどない。
娘は渋谷といえば「109」!ということで、帰りに寄っていいからと誘って一緒に出かけた。渋谷駅前は雑多な音に包まれ、人であふれていた。
其の様子に娘は一言「中国みたい・・・。」色とりどりの看板、人波、周りから降り注ぐ雑多な音。活気と喧騒は確かに中国の街にどこか似ていると思った。

 展覧会場は思ったより混雑しておらず、快適な鑑賞が出来た。今回の目玉は、ティツィアーノ・ヴェチェリオの《洗礼者聖ヨハネの首をもつサロメ》 である。ティツィアーノはラファエロと同じころ(15世紀末)に生まれ、ミケランジェロと同じぐらい長生きをした(1576年没)ヴェネチア派の巨匠である。的確で堂々とした人体表現と鮮やかで自由な色彩表現は、ヨーロッパの王侯貴族・教会といった権力者に広く受け入れられ、特に神聖ローマ帝国のカール5世が彼の最大のパトロンであったことは有名である。時代的には、ルネサンス期の画家なのだが、「聖母被昇天(Santa Maria Gloriosa dei Frari 1516-1518)」に見られるようにダイナミックな動きと溢れ出る感情表現は、すでに17世紀のバロック絵画を予感させている。
今回出品されている《洗礼者聖ヨハネの首をもつサロメ》は、初期の作品の傑作のひとつとされている。ヘロデ王の娘、サロメと洗礼者聖ヨハネの物語は、聖書の話というより、ビアズリーの挿絵が添えられたオスカー・ワイルドの戯曲の方がなじみ深いかもしれない。聖書の中のサロメは、ヘロデ王の求めに応じて舞を踊り、ヘロデ王に何でも褒美をやろうといわれて、母親のヘロデヤにそそのかされてヨハネの処刑を求めたという話に過ぎない。
 少なくともルネサンスの時代に「サロメ」の主題は、オスカー・ワイルドが創造したような、サロメがヨハネに恋をして云々という捉え方をされていたわけではない。「サロメ」と似た主題で「ユディト」の話がある。こちらはアッシリアとユダヤの戦争の中で、美しく信仰心の厚い寡婦ユディトが、アッシリアの司令官ホロフェルネスをその美しさで篭絡し、首を切り落として持ち帰りユダヤを勝利に導くという話。聖書の視点から見ればサロメは悪女であり、ユディトは英雄であるのだが、どちらも若い女性と「生首」という組み合わせなので、しばしば混同され、取り違えられてしまう。
 思うに、若い女性と生首というトンでもなく不釣合いなものの組み合わせのこの主題の絵を注文する側も、描く画家も、正直言ってサロメでもユディトでもよかったんじゃないだろうか。きれいな女性が、男の生首を盆に載せて捧げ持つという主題が、いやおうなく醸してしまうエロティシズム。これこそひそかに求められていた影の主題じゃないだろうかと思ってしまう。
 ティツィアーノの描いたサロメは、ヨハネの生首を隠してしまえば、少々憂い気味のただの清純な乙女に見える。だが、ヨハネの生首を露にしたとたん、なんともいえない複雑な妖艶さを帯びて見えるのはなぜだろう。人の心理というのは面白いものだと思う。
 そのほか、今回の展示で気に入った作品は、パオロ・ヴェロネーゼの「キリストと刑吏たち(エッケ・ホモ)」ティツィアーノ?の「混血の少年の肖像」、ピエトロ・ロンギの風俗画とカナレットのベネチアの風景画。娘は特にロンギの風俗画が気に入っていた。
 ヴェネチア派の作品は、しっかりとしたデッサンを重視する人は、物足りなさを感じるかもしれない。しかし、鮮やかな色彩表現や豊かな感情表現を好む人にはたまらない魅力があるように思う。有名作品ばかりでなく
有名作品の周囲にあった流れをともに広く見せてくれる企画展が最近増えてきたように思う。
 西洋絵画に対する理解が少しずつ深まり、単に有名だからというだけでなく、広く美術の流れを楽しむ目が、鑑賞者のなかに定着しつつあることを感じるこのごろである。

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