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DNAの展覧会鑑賞記録帳
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鑑賞日 2009年1月18日(日) 
会 場 サントリー美術館
会 期 2008年12月23日(火)~2009年1月26日(月)
    入場料 一般1300円 大高生1000円
図 版 2500円
公式HP http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/08vol06makie/index.html

 漆器というものの存在を知ったのは、小学生のころだったと思う。母親の実家で法事があったときに、紋入りの漆の膳と食器が使われたのだ。今思えば、古いだけでたいした質の物ではなかったのだと思うが、その塗りのなんともいえない色合いが気になったのだった。
 その後、美術や工芸に興味を持つようになって、いろいろと作品に触れるようになり漆器に対する興味を強く持つようになった。漆器の完成品そのものの美しさにも惹かれるが、漆という塗料及びその製作過程や蒔絵の技法というのもとても心惹かれるものがある。
 ここ2~3年前から、「18世紀」がマイブームになっているのだが、この時代の東西文化交流のなかで、漆器が大きな役割を果たしていることを知りますます興味を惹かれている。
 16世紀、南蛮貿易を通じ、蒔絵が施された漆器が西洋に伝えられる。日本は桃山時代、日本文化史上でももっとも華麗で装飾的な時代でもあった。漆黒地に鮮やかな金色の絵や模様が描かれた美しい小箱や櫃は、西洋人に新鮮な驚きを与えたことだろう。ヨーロッパだけでなく、日本の蒔絵はインドでも、中国でも珍重されている。
 今回の展覧会で、思った以上に蒔絵が世界で流通していた事実を知ることができた。江戸時代、幕府は鎖国政策をとっていたから、日本は西洋との貿易は非常に限られていたような印象を受けるが、実は盛んに日本から漆器や磁器・陶器が輸出されていたのである。印象派は日本の浮世絵に大きな影響を受けたことが知られているが、浮世絵より以前に蒔絵や陶磁器の絵という形で日本の絵画表現はヨーロッパに伝わっていたのだ。ただ、蒔絵や陶磁器は高価であるがゆえに、王侯貴族や一部富裕層でなければ持つことができないものだったのも事実だろう。
 今回の展示品はヨーロッパ各地の王室などに残されたコレクションから優れた作品が出品されている。特にマリア・テレジアから遺贈されたコレクションを元に、マリー・アントワネットが蒐集したものを加えたコレクションは見ごたえがあった。
 今回の展示で一番のお気に入りはなんと言っても、蒔絵の施されたコンデ公の箱型虎子。実に豪華な虎子である。言われなければ、絶対にこれが虎子とは思えない。蓋を開けるとビロード張りの座面があるそうだ。豪華な宮殿の居室に置かれても、これならなんの遜色もないに違いない!

東西交流の奥深さを感じた展覧会でした。会期は1月26日まで。お時間があったらぜひお出かけください。
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鑑賞日 2009年1月18日(日) 
会 場 上野の森美術館
会 期 2008年11月15日(土)~2009年1月18日(日)
    入場料 一般1400円 大学生1200円 中高生700円
図 版 2500円

「エコール・ド・パリ」の寵児と知られる、藤田嗣治に興味を持ったのは最近のことである。学生時代、彼の作品が好きだというクラスメイトがいたが、私は特に興味を持っていなかった。しかし、昨年東京国立近代美術館で開かれた東山魁夷展を見に行ったとき、なんの気なしに入った常設展会場で第2次大戦中に描かれた「アッツ島玉砕」を見たことき、「藤田嗣治」は気になる画家となった。
 藤田嗣治は1955年日本国籍を捨て、フランス人となった。そして、その4年後73歳でカトリックに改宗し、レオナール・フジタと改名している。
 今回の展覧会で一番気になったのは、晩年彼が描いた宗教画である。レオナール・フジタは最晩年に自らの構想により「平和の聖母礼拝堂」をランスに建設、そのフレスコ壁画とステンドグラスを製作した。そして、今、この礼拝堂に彼は眠っているそうだ。
 私は彼の作品をたくさん見ているわけではないけれど、「アッツ島玉砕」の絵を見たとき、これは単なる戦争画を超えた絵だと感じた。そして、今日、彼の遺した宗教画を見て納得した。「アッツ島玉砕」と「平和の聖母礼拝堂」のフレスコ画は全く画風が違うけれど、同じ「祈り」の絵だと感じた。
彼は洋画家ではあるけれど、その技法は日本画的な要素も強い。彼は西洋的なるものと東洋的なるものを融合させることで自らの画風をさせたとも言われる。そして、彼の描いた宗教画はキリスト教的ではあるが、どこか仏画の面影をも感じさせるものだと思った。

今回出品されていた作品の中で一番気に入ったのは、イブの連作。瑞々しい乙女が髪に花を差し、手に持ったりんごを胸元に当てている絵です。背景にたくさんの動物達が描かれています。もちろん、悪魔の蛇も描かれているのですけれどなんとも言えず、このイブのまなざしが透明で美しい。

東京での会期は今日で終了してしまいましたが、福岡市美術館で2月22日~4月19日
せんだいメディアテークで4月26日~6月7日と巡回する予定。お近くの方はぜひお出かけになってみてはいかがでしょうか。

鑑賞日 2008年12月6日(土) 
会 場 東京都美術館
会 期 2008年8月2日(土)~2008年12月14日(日)
    入場料 一般1600円 学生1300円 高校生800円 65歳以上900円
図 版 2500円


ヨハネス・フェルメール(1632-1675)は、言わずと知れた17世紀オランダの巨匠である。彼の名は、半ば伝説的に語られることが多い。彼が生涯に残した作品は僅か三十数点。その静謐で精緻な画風には熱狂的なファンが多いと聞く。ハン・ファン・メーヘレンの贋作騒動などの逸話もあり、その絵そのもの以外にも何かと「物語」がついている画家でもある。2003年に「真珠の耳飾の少女」を題材にした映画も製作され、絵に縁のなかった人たちにもその名を知られるようになったのではないかと思う。

彼の遺した三十数点の作品を全部見たいというマニアも多い。彼の作品1点を見る為にわざわざその美術館を訪れるというのだから、恐れ入る。そんなマニアからして見れば、一度に7点もの作品を見られる今回の展覧会に、狂気乱舞しただろう。調べてみると、彼の作品は結構日本で公開されている。

私は2004年に同じ都美術館で1点、昨年文化村の・ミュージアムで1点見ている。5月にNYのメトロポリタン美術館で4点見たので、今回の7点を合わせると13点を見たことになる。三分の一程度本物を見ることができているわけだ。

確かにフェルメールの絵は魅力的だと思う。特に小品の方がいい。今回聖書に題材をとった大きな2点があったが、あまりフェルメールらしくない感じがした。彼の絵の魅力とはなにか。巨匠の絵にこんな感想を抱いたら、石が飛んできそうだけれど、そう思ったのだから正直に書こう。

フェルメールの絵は「妄想」をそそる絵だ・・・・。

聖書に題材をとった絵がなぜ彼らしくないと感じたかといえば、はっきりとわかりきった題材の絵だからなのだと思う。ではフェルメールらしい絵とはどんなものか。ずばり、「物語」を心に描かせる絵だとおもう。その「物語」は見るものが勝手に想像していい。彼の絵から生み出される「物語」は見る人の数だけあるに違いない。いや、見る度に違う「物語」を想像させすらする。圧倒的な存在感を持ちながら、静かにある絵。こんな絵を所有したら、毎晩妄想に取り付かれて困るんじゃないだろうかとも思う。

来年2月には国立西洋美術館でルーブル美術館所蔵作品を中心に構成された展覧会があり、そちらにもフェルメールが1点出品される。日本に居ながらにして、作品の方が海を越えてやってきてくれる。ありがたいことである。

会期は残すところ一週間。もし、上野に近い方ならぜひ8時に都美術館の前に着くように家を出てください。今日、8:30時点で155人が並んでいました。会場に入場したらわき目も振らずフェルメールの作品の展示室に進みましょう。そうすれば、じっくり見られます。

今回デルフト派の作品も展示されています。思うにどれも日本人好みの静かで美しいものばかり。フェルメールの作品をじっくり堪能したら、戻ってこちらもじっくり見てください。フェルメールの名前ばかり注目されていますが、他の作品もとてもよかったです。


鑑賞日 2008年11月1日(土) 
会 場 国立西洋美術館
会 期 2008年9月30日(火)~2008年12月7日(日)
入場料 一般1500円 大学生1100円 高校生700円
図 版 2500円

19世紀末デンマークを代表する画家ーヴィルヘルム・ハンマースホイの大規模な回顧展。はっきり言って、この画家の存在を全く知りませんでした。もともと、近現代の絵よりも、中世近世のものの方が好みの為、食指が動かなかったのです。いつも展覧会のチケットは姉の伝で安く手に入れているのですが、これは買わなくていいよと言ってあったのです。ところが、姉が珍しくとても良さそうだから行きなよ~と強く勧めるため、そこまで言うならということで、出かけていきました。

午後2時半ごろ到着したところ、美術館の庭に妙なにおいがしています。いったいこのにおいはなんだろうと思ったら、落ちた銀杏が、訪れた人々に踏まれて、独特の臭気を発散していたんですね。いかにも秋というべきでしょうか・・・・。

気を取り直して、館内に入ると、思った以上に込んでいます。それでも、館内は非常に静かです。前回大琳派展の会場では、華やいで楽しそうな雰囲気が会場に漂っているなあと感じましたが、今回は非常に密やかで静かな雰囲気。はたして、展示されている絵は実に静かです。人物も風景も極薄のベールを被っているような画面です。展示室を順に見ていくうちに、どうも変な気持ちになってきます。写実的なのに、どこか現実離れしているのです。繰り返し描かれる建物も、風景も、室内空間も、部屋の中にたたずむ人物も、ある瞬間に時が流れるのが止まってしまったような、そんな感じがするのです。

なぜか、ベルギーの画家、ルネ・マグリットの絵を思い出していました。全くタイプの違う作品のはずなのだが、妙に似通ったものを感じてしまうのです。なぜだろう?描かれたモチーフは写実的なのに、どこか違うと感じさせる何かがあるからでしょうか?

この画家の作品が好きか?と自問してみたけれど、答えはでませんでした。静かで穏やかな画面に、なぜかひたひたと足元をぬらすような寂寞感が感じられるのです。この感じを好きと言い切るには、私は少しにぎやかな人間に過ぎるようです。


鑑賞日 2008年10月25日(土)
会 場 国立東京博物館 平成館
会 期 2008年10月7日(火)~11月16日(日)
入場料 一般1500円 高学生900円 大学生1200円
図 版 購入せず 記録なし

琳派というのは不思議な画派のくくりである。俵屋宗達・尾形光琳・酒井抱一が琳派の中心をなすのだけれど、この三人は時代も違い血縁もなく、直接の師弟関係もない。狩野派や丸山派といった流派とは、その点で大きく異なっている。

では何をもって琳派と一つにくくられているのだろうか。それは、宗達を光琳が、光琳を抱一が、自分で惚れこみこの技法や構図、作風を学び、我が物として受け継いでいるからだ。その点が非常に面白い。この三人は生きた時代も違うので、それぞれの作品がかもし出す雰囲気はやはり大分違う。宗達はおおらかで大胆だし、光琳は緻密で繊細、抱一はちょっとデカダンな匂いがする。それぞれ桃山・元禄・化政という時代の雰囲気を色濃く反映しているように思えてならない。展示期間外で宗達の風神雷神をみることができなかったが、光琳と抱一のものが並べて展示してあった。
どちらも宗達のものを模したものでとてもよく似ているのに受ける印象が全く違う。同じように、同じ題材を模してはいても、それぞれの作家の個性がはっきり見られるのはとても面白い。
 琳派の作品の大胆な構図やデフォルメ、色彩感覚などは、日本美術だけではなく、印象派以降のヨーロッパ美術にも大きな影響を与えていると言われている。琳派の作品は見ていてとても気持ちがいいものが多い。華やいだ美しいものはやはり心を浮き立たせるものだ。
 会場は非常に込み合っていたが、和やかな空気が流れていた。展示されている作品が見る人間に与える感情が会場の雰囲気にもえいきょうするのかな?と感じた。会期はまだ三週間ほどあるので、ご都合がつくならぜひご覧いただきたい。金屏風ってやっぱりきらきらしくて、きれいです♪


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