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DNAの展覧会鑑賞記録帳
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鑑賞日 2010年2月7日(日)
会 場 国立新美術館
会 期 2010年1月20日(水)~ 2010年4月5日(月)
入場料 一般1500円 大学生1200円 高校生800円 
図 版 2000円
公式HP

ルノワールは私にとって特別な画家といえる。生まれて初めて行った展覧会が彼のものだったからかもしれない。それは本当に幸運なことだったと思う。この時、私の中で「絵を見ることは楽しいこと」という刷り込みができたのだと思う。ルノワールの絵は、見る人を幸せな気分にしてくれる。

ルノワールの両親は仕立てやとお針子。彼の兄姉弟はそれぞれ、彫金師、図案家の妻、仕立て屋などになっている。ルノワール自身磁器絵付けの工房に徒弟として修業に出ている。その後、画塾に通い、モネやのちに印象派となる仲間たちと出会う。彼らと死ぬまで支えあったルノワールだが、第4回印象派展以降、別の道を選んでいく。ルノワールは絵が日常を彩るものであることを肯定している。絵付け工房で接したロココ調の装飾が彼の根底にはある。彼にとって、職人の世界、装飾芸術の世界は身近なものだった。身の回りを彩る美しいものたちに対する素直な愛着が、ルノワールの絵の根底にあるように思う。それが、彼を独自の道に進めていったのだろう。

ルノワールが好んで描いたものは、健康的で豊満な女性であり、子供であり、やわらかな光を帯びた花や静物、風景だ。ひたすらやさしく美しく暖かい。身近において幸せな気持ちになるものばかり。芸術至上主義的な考えからしたら取るに足らないものかもしれないけれど、人間の、やさしくありたいとか、心地よくありたいとかいう素直な感情にこれほど寄り添える絵はないのではないだろうか。実際、彼の絵を見ていると、気持ちがゆったりと暖かくなる。彼自身が美しいもの愛らしいものがとても好きだったのだろう。

初めて知ったのだが、ルノワールは少年のころ大変な美声で、パリの教会の聖歌隊で「アヴェ・マリア」で有名なあのグノーに指導を受けているそうだ。音楽の才能も豊かにあったというのは、とてもそそられる。きっと美しいものに特別感応する素地が豊かにある少年だったに違いない。

今回出展された作品の中で、一番気になったのは、「ブージヴァルのダンス」。ルノワールの友人と、マリー・クレマンティーヌ・ヴァランドン(モールス・ユトリロの母で女流画家シュザンヌ・ヴァランドン)をモデルにした絵だ。セーヌ上流の行楽地でダンスをする若いカップルの絵なのだが、2人の足元に落ちて散らばったマッチの燃えさしやスミレの花束など、多分に若者の恋の甘美な危さのようなものを感じさせる。白いドレスに身を包み、うっとりと男性に抱かれてワルツを踊る若い女性の表情がなんともいえず魅力的だ。彼女がかぶる帽子の鮮やかな赤、男の帽子と靴と呼応するベルトの黄色。背景の緑の木々。ルノワールの色彩感覚は素晴らしいとついつい見入ってしまう。フラゴナールの絵を思い出させるような、えもいわれぬ明るい色気を画面全体から感じる。

ルノワールはたくさん裸婦を描いている。彼の裸婦に色気があるか?と考えると、あまり色っぽいという感じではない。ただ触ったら気持ち良さそうだし、暖かそう。彼の描く裸婦は包容力があって、癒されるんですよね。多分、お母さんのイメージなのかもしれない。


今回図版が2000円と少しお安め。ルノワールは非常に人気のある画家なので、きっと普段よりたくさん刷ったのかもしれないなあ・・・・と、いらんことを考えてしまった。

4月頭まで会期があるので、ご家族で出かけてはいかがでしょう。優しい気持ちになれること請け合い!





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