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DNAの展覧会鑑賞記録帳
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鑑賞日 2010年1月16日(土) 
会 場 東京都美術館
会 期 2010年1月16日(土)~2010年4月4日(日)
    入場料 一般1400円 大学生1200円 高校生700円 小中生 無料
図 版 2300円

ボルゲーゼ美術館と言えば、ローマ市北東部にあるボルゲーゼ公園内にある有名な美術館だ。17世紀に教皇庁で権勢をふるったシオピーネ・ボルゲーゼ枢機卿は、大変な芸術愛好家で多くの芸術家たちのパトロンとなっていた。ボルゲーゼ美術館は、彼が自身のコレクションを収めるために建てた邸宅がもとになっている。今回の出展されているのは48点。比較的小規模の展覧会と言える。

都美術館の開館時間は9時だが、初日だし、このところ寒い日が続いているし、さほど混まないだろうと思い、9時半過ぎに到着。予想通り、入口で並ぶこともなくスムーズに入場できた。
展覧会の構成は、ボルゲーゼ・コレクションの誕生、15世紀・ルネサンスの輝き、16世紀・ルネサンスの実り、17世紀・新たな表現に向けての4部構成。作品点数が多いのは16世紀のものだが、目玉となるのは、ベルニーニのシオピーネ・ボルゲーゼ枢機卿の胸像、ラファエロの「一角獣を抱く貴婦人」、カラバッジオの「洗礼者ヨハネ」だろう。それから、注目に値するのは、特別出展の慶長遣欧使節支倉常長の肖像画。西欧人が描いた当時の日本人の姿は必見。

私としては、今回一番気になったのは、カラバッジオの「洗礼者ヨハネ」。カラバッジョは初期バロック美術を代表する画家だが、その人生は波乱万丈を通り越して、めちゃくちゃ。最後は殺人を犯して、死刑判決を受けてローマから逃亡する羽目になる。恩赦を願い出るために描いた3枚の絵と一緒に海路ローマに向かう途中、手違いで絵と離れ離れになってしまい、絵を乗せた船を陸路で追いかける途中で死んでしまう。彼が最後に描いた1枚がこの「洗礼者ヨハネ」。

この絵の前に立った瞬間、圧倒された。少年でありながら、人生の苦渋を知り尽くしたようなヨハネの表情から目を離せなくなった。ヨハネの画面を斜めに横切るように描かれた胴体は、老人のようでもありながら、膝から下の脛はまだ少年の肉づきを感じさせる。老人と少年が重なり合ったような奇妙な印象だ。ヨハネが体をしなだれかからせている積まれた丸太には深紅の布がかけられている。ヨハネはまるで赤い衣を着た誰かの膝に座って、甘えるように首に手を回しているかのように見える。赤い衣と言えば、枢機卿の衣は赤だ。パトロンだったデル・モンテ枢機卿に、教皇に恩赦を出してもらう工作を願う為に描いた絵だとすれば、何とも意味深に感じてしまう。カラバッジョの強烈な個性は好き嫌いがはっきり別れるところだと思うが、後世の画家たちに強烈な影響を与えたということは間違いない。

目玉作品だけでも、見に行く価値はあると思うが、その他の作品も、それぞれに面白さがある。有名な画家の有名な作品でなくても、それぞれの作品の持つ面白さを見つけるというのはなかなか楽しいものだ。

今年は没後400年ということで、2007年に制作されたカラヴァッジオの伝記映画も公開される。ぜひ見に行こうと思う。



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