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DNAの展覧会鑑賞記録帳
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鑑賞日 2009年4月11日(土)
会 場 Bunkamura ザ・ミュージアム
会 期 2009年4月4日(土)~2009年6月7日(日)
    入場料 大人1400円 高校大学生1000円 中学生700円
図 版 2500円 
http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/09_tretyakov/index.html

 2年前に開催された「サンクトペテルブルグ国立ロシア美術館展 ロシア絵画の神髄」以来、まとまったロシア近代絵画を見るのは2度目。帝政ロシア時代の首都はサンクトペテルブルグ。ロシア・ソヴィエト連邦共和国時代から現在まで、モスクワが首都になっています。今回の展覧会はBnkamuraザ・ミュージアムが独自に企画した展覧会とのことでモスクワの国立トレチャコフ美術館所蔵作品から19世紀後半から20世紀初頭にかけてのロシア近代絵画の名品が出品されています。
国立トレチャコフ美術館はパーヴェル・トレチャコフ(1832-1898)によって蒐集された膨大なコレクションを基礎としています。モスクワの商家に生まれたトレチャコフは紡績業で多額の財を築き、利益を社会に還元しようと数多くの慈善事業を行なったそうです。とりわけ「ロシアの芸術家によるロシア美術のための美術館」を作ること、それもあらゆる人に開かれた公共美術館の設立を行いました。今回の出品作には創設者トレチャコフが熱心に収集したレーピンやクラムスコイ、シーシキンなど、同時代の傑作が揃っています。ロシアの自然、美しい情景を描いた作品を中心に、著名人チェーホフ、トルストイ、ツルゲーネフ等の肖像など、ロシア文学愛好家にも、興味深い作品を見ることができます。
 時代的には19世紀産業革命によって、ロシアが近代化に向った時代でもあり、社会主義革命を前に、ロシア帝国がゆっくりと瓦解への道を歩み始めた時代でもあったわけです。しかしながら、描かれた作品は写実的で静かな人間らしい美しい作品たちです。いかにもロシアらしいと感じさせるのは、風景画に見る光のコントラストの強さでしょうか。画面から大陸特有の乾いた空気と紫外線の強さを感じるのです。不思議なほどきらきらした景色なのです。フランスの風景画でも、イタリアの風景画でもない。いかにもロシア的な風景画。これは是非実際に見て感じてもらわないとわからないと思います。
 ロシアの文豪の肖像画が三枚並んでいて、なかなか迫力でありました。トルストイの民話集や短めの小説は高校時代の愛読書でした。容姿にコンプレックスを持っていて、貴族で地主の生まれながら、農奴たちといっしょに働いたというトルストイの肖像画は、昔の知り合いにひょっこり出くわしたような、味わい深いものでありました。
 すぐ隣の国なのに、よくわからない国ロシア。もっと理解を進める為に、こんな美術展が開かれるといいと思いました。
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鑑賞日 2009年3月15日(日) 
会 場 東京都美術館
会 期 2009年1月24日(土)~2009年4月5日(日)
    入場料 一般1500円 大学生1200円 高校生800円 小中生 無料
図 版 2500円
公式HP http://www.asahi.com/ac/
19世紀後半にイギリスで興ったデザイン運動「アーツ&クラフツ」の広がりを各国の美しい作品からたどった展覧会。イギリス・ヨーロッパ・日本の三部構成になっている。壁紙や家具、食器など、とても身近なものばかりなのでとても楽しくみることができた。インテリアに興味があって自宅の生活空間を演出するのが好きな人にはたまらないだろうと思う。出品点数280点と見ごたえ充分。


 
鑑賞日 2009年3月15日(日) 
会 場 国立西洋美術館
会 期 2009年2月28日(土)~2009年6月14日(日)
    入場料 一般1500円 大学生1200円高校生800円 小中生 無料
図 版 2500円
公式HP http://www.ntv.co.jp/louvere
《巡回》6月30日~9月27日京都市美術館

今年は二つのルーブル美術館所蔵品展が開催される。先ずは、上野の国立西洋美術館での「ルーブル美術館展-17世紀ヨーロッパ絵画」が開かれ、3月25日からは六本木の新国立美術館で、「ルーブル美術館展―美の宮殿の子どもたち」が開かれる。上野の西洋美術館での展覧会の目玉は間違いなくフェルメール作「レースを編む女」だろう。ここの所、フェルメールの作品は続々と日本にやってきている。わざわざ海外の美術館を訪ね歩かなくても、作品の方が日本にやってきてくれるのだから、なんともありがたいことだ。
 フェルメールの作品のほかにも、レンブラント、ルーベンス、ファン・ダイク、ニコラ・プッサン、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール、クロード・ロラン、ベラスケス、ムリーリョ、といった17世紀を代表する作家の作品を含め71点が出品されている。
今回の展覧会では、17世紀絵画を、3つのテーマに分類してヨーロッパ絵画の全体を見渡そうという試みがされている。
 開館30分前に現地に到着したときには、既に行列ができていた。ざっと数えても100人は並んでいた。会期中の混雑を予想してか入り口は正面ではなく展覧会場に通じる階段脇に臨時入り口が設定されている。6月まで会期があるのでテントも既に設営済みだ。昔はあまりこういった来館者の便利を考えた運営はされていなかったように思う。独立行政法人化したせいだろうか?ショップでの物販も、昔は絵葉書とカタログ、関連書籍がちょっとというものだったが、最近は展覧会テーマにあわせたアクセサリーやお菓子なども売られている。今回は、ボビンレース関連(レースを編む女にちなんでいるのでしょう)、新橋小川軒のお菓子、屋外で、マカロン(ルーブルはフランスにあるから?)も売っていた。ついつい、つられて買ってしまう自分に苦笑するしかない。
 さて、肝心の出品作品について。フェルメールの「レースを編む女」のあまりの小ささに驚いた。24センチ×21センチしかない。寄せ書きなどをする色紙が24センチ×27センチなので、それよりもすこし小さいという事になる。この小さな画面に、黄色い服に白い飾り襟をつけた若い女性が一心にボビンレースを編んでいる情景が描かれている。とにかく精緻で静かな絵であるが、よくわからない部分もある。手前の机の上に置かれたクッションから白い糸と赤い糸が垂れ下がっている。どうしてクッションから糸が?そして、その赤い色がやけに鮮やかで、くしゃくしゃとこごなっているように見える。いったいこれは何を言わんとしているのだろう?フェルメールの絵はどうも妄想を誘うように仕掛けられているような気がしてならない。
 ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの代表作、「大工ヨセフ」が出品されている。光と影の強いコントラストと、描かれた人の心を垣間見させるような表現がいかにもバロック的な傑作だ。蝋燭の炎に翳されたイエスの左手の表現や、ヨセフの腕の血管の浮き具合などが余りにリアルで、つい見入ってしまった。この作品で一番心引かれたのは、ヨセフとイエスのまなざしだ。ヨセフは幼い息子をじっと見つめているのに、イエスはヨセフを見ていない。頭がくっつきそうなほどちかい距離にいながら、この二人は見詰め合っているわけではない。もし、この二人の視線が合い、互いをみていたならば、この絵のもつ静かな緊張感は失われてしまい、ただの老人とこどもの絵になってしまうのではないだろうか。
 出品作で、今回私が一番気に入ったのは、カルロ・ドルチの「受胎告知」かもしれない。国立西洋美術館の所蔵品の中にカルロ・ドルチの「親指の聖母」がある。胸に掻き合わせた青いマントから親指だけがのぞいているのでそう呼ばれているのだが、甘美で繊細な美しい絵だ。「受胎告知」が同じ作者のものであることはすぐにわかった。大天使ガブリエルと聖母マリアの2枚一組の作品だ。受胎告知は全身像で描かれる事が多いのだが、この作品は大天使も聖母もバストショットで描かれている。大天使の胸元で交差された手や聖母マリアの重ね合わせた手の表情がとてもきれいな絵なのだが、見ているうちに、妙な声が聞こえてきてしまった。

聖母マリア:私でなければいけませんか?私はまだ子供ですし、神様の赤ちゃんを産むなんて、困ります・・・・。
大天使ガブリエル:そうですよね・・・。でも、私も神様に、「お前、ちょっと伝言してこい」って言われたので、お伝えしに来たまででして・・・、お気の毒ですけど、神様のお言いつけってことで、勘弁してくださいね。」

美しい宗教画に対して、なんてことを!と自分でも思ったのですけど、二人の表情を見ていると、どうにもそんな会話をしていそうに思えてしまうのだから仕方ない。

出品数は71点とそう多くはないが、見所は多い展覧会でした。会期終了間際は混雑が酷くなるのが常ですから、早めに見に行かれることをお勧めします。


鑑賞日 2009年2月28日(土) 
会 場 目黒区美術館
会 期 2009年2月11日(水)~2009年3月29日(日)
    入場料 一般900円 大高生700円 小中生 無料
図 版 1800円
公式HP http://www.mmat.jp/

女の子なら、絢爛豪華なドレスに一度は憧れたことがあると思う。幾重にも重なるレース飾りに大きく膨らんだスカート、重なりあうリボン、繊細な扇を手にさざめく貴婦人達。
映画や絵画の中で見ることはできても、実際にこの目で実物を見ることはなかなか難しい。ましてや昨日作られたばかりかと見まごうばかりのコンディションのものなどそうそうあるものではない。今回の展覧会では、『18世紀-19世紀』の実際に身につけられた衣装や靴、コルセット、扇などを間近に見ることができるとあって、とても楽しみに待っていた。目黒区美術館を訪れるのは今回が初めて。目黒川沿いの静かな遊歩道に面して立つ美美術館はこじんまりとした印象です。
朝10時、開館と同時に入場。先ずは1階の小さな展示室へ。ここにはガラスケースに納められた扇が展示されていた。団扇ではなく、薄い板状のものを糸で綴ったもの(桧扇形式)といわゆる紙や布を骨に張ったもの(扇子形式)のどちらも折りたたみできる扇は日本の発明品だ。日本から中国にわたり16世紀にはヨーロッパに伝わったとされている。
さまざまな装飾が施された扇は実に美しく、見ごたえも充分。展示された扇の中に、スパンコールが使われたものがあった。1780年代製なのだが、スパンコールがこの時代に既に使われていたとは驚いた。実際に使われていたものだからこその手擦れの跡があり、300年近く前の人々の暮らしをのぞいているような不思議な心持になる。
主な展示は2階会場になっている。20の場面を想定し、選ばれた衣装が展示されている。
ただ動きのないボディに着せられ衣装が並べられているのではなく、美しい表情を持ったマネキン達が想定された場面にふさわしい仕草をしてそこにいる。衣服というのは、人が着てはじめて生き生きとした表情を持ち始めるものだとつくづく思う。国立東京博物館にも衣装の収蔵品があるのだが、衣桁にかけられたような展示しかない。実際に当時の着付けを再現してくれたらもっと面白いのになあとふと感じた。

一番乗りで誰もいない会場でたっぷりと舐めるように衣装を眺めるこの贅沢!図録や映画ではわからなかった疑問点のいくつかが解消された。
先ず、ローブ・ア・ラ・フランセーズの構造。ワトー襞と呼ばれる背中に流れるプリーツがどうなっているのか絵などではよくわからなかったのだが、今回実際に復元したパターンや縮小サイズのものを手にとって見ることができ、長年の疑問が解けた。
コルセットやパニエの実物もなかなか興味深かった。18世紀のコルセットは金属製の鳩目がないので、ボタンホールのように紐を通す穴がかがられている。今はあるのが当たり前のものがなかった時代、どのようにその目的を果たすために処理がされていたのか、そういったことを知るのも面白い。
衣装は保存状態がとてもよく、とても300年近く保存されてきたものとは思えない。
女性の衣装は全体に美しい織物に、細かな襞やリボン刺繍などが施された可憐なものが多かった。思ったよりずっと華奢な女性達だったようだ。特に袖の細さには驚いてしまう。この当時、貴族達は腕を肩より上に上げる動作などほとんどしなかったのだろう。袖付けなども今の機能を重視したものと明らかに違う。つい、むらむらとめくって中の構造などを確認したくなるが、そこはぐっとこらえて、伸び上がったりかがんだり覗き込んだりして、できる限りいろんな角度から眺め見る。かなり怪しい人物に見えたに違いない。
女性衣装が織物の美しさを中心にし、共布で作られた襞飾りなどで装飾されているのに比べ、男性の衣装は総じて見事な刺繍が施され、圧倒される。ボタンも刺繍された布で包まれ、思わずこれだけの刺繍にどれだけの時間が費やされたのかと溜息が出る。キュロットの構造が知りたかったのだが、ジレに阻まれ、確認することができなかった。アビのベンツの隙間からのぞき見た感じでは、フィット感にちょっと難がありそうな感じだったけれど、実際はどうだったのかな?と更に興味をそそられてしまった。
髪型や靴や帽子もコーディネートされての展示のため、より一層当時の人々の装いを現実のものとして感じられた。
今回19世紀の装いとして、木綿のモスリンのドレスと、ダヴィッドが描いたナポレオンの戴冠式の絵から復元された衣装の展示もあったのだが、面白いと思ったのは、あの壮麗なトレーンの構造だ。あの深紅のトレーンはなんと、宝塚歌劇団のフィナーレの羽飾りのように肩に背負われているのだ。前から見ると、リュックサックの肩紐のようになっている。胴体の部分もベルトのように締めるようになっていて、重量の分散が図られているのだ!こういうのは実際に見てみなければわからないものだ。確かにあれだけの大きさの布を引きずる為にはこんな仕掛けが必要なんだなあと、感心してしまった。

18世紀ははるか昔なのだけれど、今回の展示を見て、あの時代にも人々は自分と同じ生きた人間達の時代だったのだと肌で感じることができた。服飾に興味がある方、18世紀という時代に興味がある方にはぜひお勧めな展覧会です。


鑑賞日 2009年1月18日(日) 
会 場 サントリー美術館
会 期 2008年12月23日(火)~2009年1月26日(月)
    入場料 一般1300円 大高生1000円
図 版 2500円
公式HP http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/08vol06makie/index.html

 漆器というものの存在を知ったのは、小学生のころだったと思う。母親の実家で法事があったときに、紋入りの漆の膳と食器が使われたのだ。今思えば、古いだけでたいした質の物ではなかったのだと思うが、その塗りのなんともいえない色合いが気になったのだった。
 その後、美術や工芸に興味を持つようになって、いろいろと作品に触れるようになり漆器に対する興味を強く持つようになった。漆器の完成品そのものの美しさにも惹かれるが、漆という塗料及びその製作過程や蒔絵の技法というのもとても心惹かれるものがある。
 ここ2~3年前から、「18世紀」がマイブームになっているのだが、この時代の東西文化交流のなかで、漆器が大きな役割を果たしていることを知りますます興味を惹かれている。
 16世紀、南蛮貿易を通じ、蒔絵が施された漆器が西洋に伝えられる。日本は桃山時代、日本文化史上でももっとも華麗で装飾的な時代でもあった。漆黒地に鮮やかな金色の絵や模様が描かれた美しい小箱や櫃は、西洋人に新鮮な驚きを与えたことだろう。ヨーロッパだけでなく、日本の蒔絵はインドでも、中国でも珍重されている。
 今回の展覧会で、思った以上に蒔絵が世界で流通していた事実を知ることができた。江戸時代、幕府は鎖国政策をとっていたから、日本は西洋との貿易は非常に限られていたような印象を受けるが、実は盛んに日本から漆器や磁器・陶器が輸出されていたのである。印象派は日本の浮世絵に大きな影響を受けたことが知られているが、浮世絵より以前に蒔絵や陶磁器の絵という形で日本の絵画表現はヨーロッパに伝わっていたのだ。ただ、蒔絵や陶磁器は高価であるがゆえに、王侯貴族や一部富裕層でなければ持つことができないものだったのも事実だろう。
 今回の展示品はヨーロッパ各地の王室などに残されたコレクションから優れた作品が出品されている。特にマリア・テレジアから遺贈されたコレクションを元に、マリー・アントワネットが蒐集したものを加えたコレクションは見ごたえがあった。
 今回の展示で一番のお気に入りはなんと言っても、蒔絵の施されたコンデ公の箱型虎子。実に豪華な虎子である。言われなければ、絶対にこれが虎子とは思えない。蓋を開けるとビロード張りの座面があるそうだ。豪華な宮殿の居室に置かれても、これならなんの遜色もないに違いない!

東西交流の奥深さを感じた展覧会でした。会期は1月26日まで。お時間があったらぜひお出かけください。
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