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DNAの展覧会鑑賞記録帳
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鑑賞日 2009年2月28日(土) 
会 場 目黒区美術館
会 期 2009年2月11日(水)~2009年3月29日(日)
    入場料 一般900円 大高生700円 小中生 無料
図 版 1800円
公式HP http://www.mmat.jp/

女の子なら、絢爛豪華なドレスに一度は憧れたことがあると思う。幾重にも重なるレース飾りに大きく膨らんだスカート、重なりあうリボン、繊細な扇を手にさざめく貴婦人達。
映画や絵画の中で見ることはできても、実際にこの目で実物を見ることはなかなか難しい。ましてや昨日作られたばかりかと見まごうばかりのコンディションのものなどそうそうあるものではない。今回の展覧会では、『18世紀-19世紀』の実際に身につけられた衣装や靴、コルセット、扇などを間近に見ることができるとあって、とても楽しみに待っていた。目黒区美術館を訪れるのは今回が初めて。目黒川沿いの静かな遊歩道に面して立つ美美術館はこじんまりとした印象です。
朝10時、開館と同時に入場。先ずは1階の小さな展示室へ。ここにはガラスケースに納められた扇が展示されていた。団扇ではなく、薄い板状のものを糸で綴ったもの(桧扇形式)といわゆる紙や布を骨に張ったもの(扇子形式)のどちらも折りたたみできる扇は日本の発明品だ。日本から中国にわたり16世紀にはヨーロッパに伝わったとされている。
さまざまな装飾が施された扇は実に美しく、見ごたえも充分。展示された扇の中に、スパンコールが使われたものがあった。1780年代製なのだが、スパンコールがこの時代に既に使われていたとは驚いた。実際に使われていたものだからこその手擦れの跡があり、300年近く前の人々の暮らしをのぞいているような不思議な心持になる。
主な展示は2階会場になっている。20の場面を想定し、選ばれた衣装が展示されている。
ただ動きのないボディに着せられ衣装が並べられているのではなく、美しい表情を持ったマネキン達が想定された場面にふさわしい仕草をしてそこにいる。衣服というのは、人が着てはじめて生き生きとした表情を持ち始めるものだとつくづく思う。国立東京博物館にも衣装の収蔵品があるのだが、衣桁にかけられたような展示しかない。実際に当時の着付けを再現してくれたらもっと面白いのになあとふと感じた。

一番乗りで誰もいない会場でたっぷりと舐めるように衣装を眺めるこの贅沢!図録や映画ではわからなかった疑問点のいくつかが解消された。
先ず、ローブ・ア・ラ・フランセーズの構造。ワトー襞と呼ばれる背中に流れるプリーツがどうなっているのか絵などではよくわからなかったのだが、今回実際に復元したパターンや縮小サイズのものを手にとって見ることができ、長年の疑問が解けた。
コルセットやパニエの実物もなかなか興味深かった。18世紀のコルセットは金属製の鳩目がないので、ボタンホールのように紐を通す穴がかがられている。今はあるのが当たり前のものがなかった時代、どのようにその目的を果たすために処理がされていたのか、そういったことを知るのも面白い。
衣装は保存状態がとてもよく、とても300年近く保存されてきたものとは思えない。
女性の衣装は全体に美しい織物に、細かな襞やリボン刺繍などが施された可憐なものが多かった。思ったよりずっと華奢な女性達だったようだ。特に袖の細さには驚いてしまう。この当時、貴族達は腕を肩より上に上げる動作などほとんどしなかったのだろう。袖付けなども今の機能を重視したものと明らかに違う。つい、むらむらとめくって中の構造などを確認したくなるが、そこはぐっとこらえて、伸び上がったりかがんだり覗き込んだりして、できる限りいろんな角度から眺め見る。かなり怪しい人物に見えたに違いない。
女性衣装が織物の美しさを中心にし、共布で作られた襞飾りなどで装飾されているのに比べ、男性の衣装は総じて見事な刺繍が施され、圧倒される。ボタンも刺繍された布で包まれ、思わずこれだけの刺繍にどれだけの時間が費やされたのかと溜息が出る。キュロットの構造が知りたかったのだが、ジレに阻まれ、確認することができなかった。アビのベンツの隙間からのぞき見た感じでは、フィット感にちょっと難がありそうな感じだったけれど、実際はどうだったのかな?と更に興味をそそられてしまった。
髪型や靴や帽子もコーディネートされての展示のため、より一層当時の人々の装いを現実のものとして感じられた。
今回19世紀の装いとして、木綿のモスリンのドレスと、ダヴィッドが描いたナポレオンの戴冠式の絵から復元された衣装の展示もあったのだが、面白いと思ったのは、あの壮麗なトレーンの構造だ。あの深紅のトレーンはなんと、宝塚歌劇団のフィナーレの羽飾りのように肩に背負われているのだ。前から見ると、リュックサックの肩紐のようになっている。胴体の部分もベルトのように締めるようになっていて、重量の分散が図られているのだ!こういうのは実際に見てみなければわからないものだ。確かにあれだけの大きさの布を引きずる為にはこんな仕掛けが必要なんだなあと、感心してしまった。

18世紀ははるか昔なのだけれど、今回の展示を見て、あの時代にも人々は自分と同じ生きた人間達の時代だったのだと肌で感じることができた。服飾に興味がある方、18世紀という時代に興味がある方にはぜひお勧めな展覧会です。


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