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DNAの展覧会鑑賞記録帳
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鑑賞日 2009年4月25日(土) 
会 場 東京国立博物館 表慶館
会 期 2009年3月18日(土)~2009年5月31日(日)
    入場料 一般1400円 大高生800円 小中生 無料
図 版 3200円

 ルイ=フランソワ・カルティエが1847年に創設した宝飾工房「カルティエ」は、「王の宝石商・宝石商の王」とも称される世界屈指の宝飾ブランドである。このところ、18世紀の服飾関連の展覧会を見ていたので、宝飾についても興味があった。何しろ、西洋の服飾の歴史を見るうえで、身を飾る宝飾品は不可欠な存在である。西洋絵画の肖像画などは権力者のものが多いので、豪華な衣装を更に絢爛といろどる宝飾品が当りまえといった感じがする。

 裕福な上流家庭に生まれ育ったのであれば、身近に「宝飾品」というものを見る機会があったのだろうが、残念ながら田舎の、むしろビンボーと言ってもいいような家の生まれなので、大人になるまで実物を見る機会は皆無だった。宝石といえば、もっぱら家庭百科事典の「宝石」の巻でみるぐらい。どういう訳か一般家庭には縁がありそうもない宝石に関するものが家庭百科の独立した一巻になっていた。ともあれ、宝石言葉だの、冠婚葬祭での宝石の選び方、石のカットの名称や、宝飾品の名品の写真などが沢山あり、子供心にもきれいなものだなあ~と見入ったものである。

 大学で美術史を学ぶようになった頃、時代はまさにバブル景気だった。「贅沢は素敵」と言わんばかりに巷は高級品嗜好で、デパートの催事場なので「○○の秘宝展」などと題された展覧会がよく開かれていた。そういったところへ出張っていって、はじめて本物の宝飾品の実物を目にするようになった。

 さて、そんな育ちの人間なので、宝飾品は最初から所有するとか見につけるとか考える対象ではなく、あくまでもその美を「鑑賞する」ものとしか捉えられない。よって、今回の展示についても、人の技術によってどれだけ精巧に宝飾品が作り上げられているかをじっくりと見る。

 18世紀末から19世紀はまさに技術革新の時代だった。産業革命によって、あらゆる産業が近代化されていく。宝飾品の世界も例外ではなく、プラチナという金属が貴金属として価値を認められ、利用されていく。しかし、プラチナは精錬・加工が難しく、その技術が確立してはじめて宝飾品の世界に素材として広まっていく。その難しい金属を自在に操り、美しい宝飾品にしたのがまさに「カルティエ」だったというのだ。

 今回の展示は19世紀半ばから20世紀後半までの名品276点で構成されている。まさにまばゆい光の洪水だ。ダイヤモンド、ルビー、エメラルド、サファイヤ・・・・。宝石とプラチナ・金・銀といった貴金属の艶やかな競演。眩暈がするくらい精緻な加工にただただ目が引きつけられる。人間の技術ってすごい!!本当にすごい!

 私には、あくまでも鑑賞の対象の宝飾品。しかし、これを所有したい、身につけたいと思う人もいる。展示品を見て思わず「これ欲しいわア~」と溜息をこぼす若い女性たち。
 
 見るものを圧倒する宝飾品は一体誰の為に作られたのか?当然のことながら、高価なこれらを所有し身につけたのは王侯貴族・大金持ち。需要と供給が経済の基本だとすれば、宝飾品の加工技術だって例に漏れるものではない。人の技術の粋を集め作り上げられる美しい品々はそれを所有し、享受する人々なくしてはありえない。

 100年に一度といわれる大不況のなか、目玉が飛び出るような高額の宝飾品を買う人間と、食べるもままならぬ人間がいるという現実に戸惑いを感じないわけではない。

 ただ、宝飾品の中に詰め込まれた人の技術がなくなってしまっていいのか、と問われるとそれもまた良しとは言い難い。現実に生きるということを考えると、ある種の「美」は壮大な無駄のようなものなのかも知れない。でも、人間はその「美」に魅せられてしまうものでもあるのかも知れない。夢のように美しい輝きを1400円で堪能できるとすれば、それはお安いものだと思う。
 
 ゴールデンウィークに出かけられてはいかがでしょうか?

~蛇足~
展覧会の後、銀座和光に足を伸ばし、宝飾品売り場をのぞいてみました。並んだ数字の多さに目を丸くしつつ、それでも先ほど展覧会場で見た品々とのグレードの違違いに愕然。和光にある商品だって、普通のデパートに置いてあるものよりすごいものばかりなんでしょうけど、さすが王侯貴族がオーダーして作らせたものと、日本の一般市民むけ商品(勿論買えるだけの資力があることが前提ですけど)の違いなんでしょうねえ・・・・。

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