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DNAの展覧会鑑賞記録帳
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鑑賞日 2009年3月15日(日) 
会 場 国立西洋美術館
会 期 2009年2月28日(土)~2009年6月14日(日)
    入場料 一般1500円 大学生1200円高校生800円 小中生 無料
図 版 2500円
公式HP http://www.ntv.co.jp/louvere
《巡回》6月30日~9月27日京都市美術館

今年は二つのルーブル美術館所蔵品展が開催される。先ずは、上野の国立西洋美術館での「ルーブル美術館展-17世紀ヨーロッパ絵画」が開かれ、3月25日からは六本木の新国立美術館で、「ルーブル美術館展―美の宮殿の子どもたち」が開かれる。上野の西洋美術館での展覧会の目玉は間違いなくフェルメール作「レースを編む女」だろう。ここの所、フェルメールの作品は続々と日本にやってきている。わざわざ海外の美術館を訪ね歩かなくても、作品の方が日本にやってきてくれるのだから、なんともありがたいことだ。
 フェルメールの作品のほかにも、レンブラント、ルーベンス、ファン・ダイク、ニコラ・プッサン、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール、クロード・ロラン、ベラスケス、ムリーリョ、といった17世紀を代表する作家の作品を含め71点が出品されている。
今回の展覧会では、17世紀絵画を、3つのテーマに分類してヨーロッパ絵画の全体を見渡そうという試みがされている。
 開館30分前に現地に到着したときには、既に行列ができていた。ざっと数えても100人は並んでいた。会期中の混雑を予想してか入り口は正面ではなく展覧会場に通じる階段脇に臨時入り口が設定されている。6月まで会期があるのでテントも既に設営済みだ。昔はあまりこういった来館者の便利を考えた運営はされていなかったように思う。独立行政法人化したせいだろうか?ショップでの物販も、昔は絵葉書とカタログ、関連書籍がちょっとというものだったが、最近は展覧会テーマにあわせたアクセサリーやお菓子なども売られている。今回は、ボビンレース関連(レースを編む女にちなんでいるのでしょう)、新橋小川軒のお菓子、屋外で、マカロン(ルーブルはフランスにあるから?)も売っていた。ついつい、つられて買ってしまう自分に苦笑するしかない。
 さて、肝心の出品作品について。フェルメールの「レースを編む女」のあまりの小ささに驚いた。24センチ×21センチしかない。寄せ書きなどをする色紙が24センチ×27センチなので、それよりもすこし小さいという事になる。この小さな画面に、黄色い服に白い飾り襟をつけた若い女性が一心にボビンレースを編んでいる情景が描かれている。とにかく精緻で静かな絵であるが、よくわからない部分もある。手前の机の上に置かれたクッションから白い糸と赤い糸が垂れ下がっている。どうしてクッションから糸が?そして、その赤い色がやけに鮮やかで、くしゃくしゃとこごなっているように見える。いったいこれは何を言わんとしているのだろう?フェルメールの絵はどうも妄想を誘うように仕掛けられているような気がしてならない。
 ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの代表作、「大工ヨセフ」が出品されている。光と影の強いコントラストと、描かれた人の心を垣間見させるような表現がいかにもバロック的な傑作だ。蝋燭の炎に翳されたイエスの左手の表現や、ヨセフの腕の血管の浮き具合などが余りにリアルで、つい見入ってしまった。この作品で一番心引かれたのは、ヨセフとイエスのまなざしだ。ヨセフは幼い息子をじっと見つめているのに、イエスはヨセフを見ていない。頭がくっつきそうなほどちかい距離にいながら、この二人は見詰め合っているわけではない。もし、この二人の視線が合い、互いをみていたならば、この絵のもつ静かな緊張感は失われてしまい、ただの老人とこどもの絵になってしまうのではないだろうか。
 出品作で、今回私が一番気に入ったのは、カルロ・ドルチの「受胎告知」かもしれない。国立西洋美術館の所蔵品の中にカルロ・ドルチの「親指の聖母」がある。胸に掻き合わせた青いマントから親指だけがのぞいているのでそう呼ばれているのだが、甘美で繊細な美しい絵だ。「受胎告知」が同じ作者のものであることはすぐにわかった。大天使ガブリエルと聖母マリアの2枚一組の作品だ。受胎告知は全身像で描かれる事が多いのだが、この作品は大天使も聖母もバストショットで描かれている。大天使の胸元で交差された手や聖母マリアの重ね合わせた手の表情がとてもきれいな絵なのだが、見ているうちに、妙な声が聞こえてきてしまった。

聖母マリア:私でなければいけませんか?私はまだ子供ですし、神様の赤ちゃんを産むなんて、困ります・・・・。
大天使ガブリエル:そうですよね・・・。でも、私も神様に、「お前、ちょっと伝言してこい」って言われたので、お伝えしに来たまででして・・・、お気の毒ですけど、神様のお言いつけってことで、勘弁してくださいね。」

美しい宗教画に対して、なんてことを!と自分でも思ったのですけど、二人の表情を見ていると、どうにもそんな会話をしていそうに思えてしまうのだから仕方ない。

出品数は71点とそう多くはないが、見所は多い展覧会でした。会期終了間際は混雑が酷くなるのが常ですから、早めに見に行かれることをお勧めします。


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