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DNAの展覧会鑑賞記録帳
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鑑賞日 2011年7月31日(日)
会 場 東京国立近代美術館
会 期 2011年5月31日(火)~ 7月31日(日)
入場料 一般1500円、大学生1100円、高校生700円
図 版 2500円

パウル・クレーという画家について、正直言ってほとんど何も知らない。
しかし、彼の作品のいくつかを知っているし、好きか・嫌いかと問われれば、間違いなく、好きと答える。まず第一に、彼の名前の響きが好きだ。「パウル・クレー」その音からして子供が耳元でくすくすと笑っているような心地良さを感じる。ミケランジェロ・ブオナローティなんて聞くと、ちょっと汗臭そうな感じがするし・・・。まあ、そんなことは個人的な感じ方の問題にすぎないのだが。とにかく、最終日、滑り込みで見に行ってきた。

見に行けて良かった!たくさんの作品を見てみて、やっぱり彼の作品は私にとって心地よかった。残業続きの疲れた目と心に優しいというか・・・。

クレーの作品を見ていつも感じるのは「子供」の心だ。彼は生涯子供の心を持っていたんじゃないだろうか。一般に、子供=未成熟・未完成という連想を持たれるかもしれないけれど、私の中では、子供とは、飽くなき追求者であり、自分の中にある規範に忠実な者であるという意味合いが強い。

今回の展覧会の大きな特徴は、「クレーの作品は物理的にどのように作られたのか」をテーマに作品に迫っている事だ。作品が生み出されるプロセスを丁寧に実際の作品や参考資料によって見せてくれているのだが、そこから感じ取れたのは、画家が内的な欲求をいかにして形にしていったら自身の満足が得られるのかに腐心している姿だった。

幼い子供が絵を描いたり、何かを作る時の真剣さはすごい。大人になってしまうと、他者がどう自分の作品を評価するだろうかとか、他の人が作った作品と自分の作品のどちらが優れているかとか気にするようになってしまうけれど、本当に幼い子供はそういう気持ちを持たずに、自分の中にあるものをどうしたら外に出せるかだけに集中するし、自らの求める完成度に忠実でもある。そうやって生み出された作品は、なんとも言えない魅力を持っている。クレーの絵の魅力は、そんな魅力にとても近いように感じる。多分、クレーは絶対自分の作品が大好きだったと思う。

そんな彼の絵を見ながら思った事がある。

たとえば、大昔の作品を見るとき、私はその作者自身の事を何も知らない。作品は完全に作者の人生と切り離されて観賞される。ほどほど近い時代の作品だと、作品と作者の人生との切り離しは完全とは言えなくなる。有名な作者の作品であれば、多少なりとも作者についての情報も入ってくる。自分と同じ時代の作品で有れば、作者の人生と作品を切り離すことはかなり難しいかもしれない。それどころか、作品と作者のあり方はセットになっていると言っていいかもしれない。それがいいとか悪いとかそういう事はどうでもいいけれど、同時代に生み出される作品を同時代人が見るというのは、そういうものなんだと思った。

クレーが自分の作品リストを作り、自分で評価して、ランク付けしていたという事を初めて知って、作品と彼の関係にすごく興味を引かれた。


モーツアルトの作品とサリエリの作品、今の評価ではモーツアルトの方がダントツで上だけれど、彼らが生きていた時代には、逆だったわけだ。何億もの値がつくゴッホの絵だって、彼が生きていた時にはまったく評価されなかった。

後の時代にまで評価される作品と、そうでない作品との間にはなにがあるんだろう?作品の普遍性とか言われるけれど、それって一体なんなのだろう?もやもやと思いを巡らすけれど、明確にはわからない。

芸術作品と作者とそれを売買する人間と所有し観賞する人間と・・・。
作品はそれぞれの人間にとってそれぞれの価値を持っているんだろうなあ。

自分の言葉で作品を見て感じた事、考えた事を突き詰めて行く事ができたらいいのだろうけれど、最近とんとそういう根気に欠けてきてしまった。

ただ素直に作品を見て好きか嫌いか、その絵から頭の中に浮かんでくる自分自身の過去の経験、引き出された感情や連想などを楽しむ事に没頭している。

クレーの作品はやっぱり好きだ。色も形もとてもしっくりくる。こんな作品を描いた彼がどんな人だったのか、興味がわいた。図版を買ってきたので、解説をちゃんと読んで見ようと思う。

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