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DNAの展覧会鑑賞記録帳
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鑑賞日 2011年5月29日(日)
会 場 ザ・ミュージアム
会 期 2011年5月29日(日)~ 2011年7月3日(日)
入場料 一般1400円 大・高校生1000円 小中学生700円

台風接近に伴う雨が降りしきる中、展覧会初日に朝から出かけて行きました。ばらの画家とも評される彼の場合、普通の美術愛好家の他に、ばら愛好家も楽しみにしていたらしく、雨振りにも関わらずチケット売り場には行列ができていました。

ルドゥーテの展覧会はこれで2回目。前回も同じザ・ミュージアムで「ばら図譜」をテーマにしたものでした。今回は、植物画家としての彼の業績を初期から晩年に至るまで見せてくれています。

17世紀、北方絵画において花を主題とした静物画が多く描かれています。それらの絵はとても精密で美しいものです。ベルギーの画家一家に生まれた彼も、その伝統を学びながら絵の技術を身につけていったのでしょうが、彼が描く花や植物は17世紀の静物画とはまったく異なる印象をあたえます。17世紀の絵は美しいけれど、どこかよそよそしく生気に欠けています。花の静物画が「虚栄」を表す宗教的なテーマとして描かれていたからかもしれません。ルドゥーテのそれは、命に対する尊敬と讃美に満ちています。

彼の伝記によると、宗教画や肖像画を巧みに描く確かな技術を持っていたようです。しかし、彼の興味はもっぱら花や植物に向かっていたようです。伝記では彼には社交の才能があって、それによって彼が世俗的なチャンスをものにしたかのように書かれていましたが、なんとなくそれは違うような気がします。

フランソワ・ジェラールが描いた彼の肖像画を見ると、彼は何か自分の利害の為に知恵が回るような感じには見えません。暖かな茶色の目はちゃめっけを秘めていて、少し受け口気味な口元は甘え上手な印象、少しひそめられた眉には繊細さと注意深さが表れているように見えます。この手の人は、社交上手というより、その人柄が周囲の援助の手を自然に引き寄せるのだと思います。ついつい助けてやりたくなってしまう人っているじゃないですか。正にそのタイプだと思います。

もちろん、彼の仕事がいい加減なものであれば、人々の援助の手は離れていってしまったかもしれません。しかし。花や植物に対する彼自身の深い執着と愛情は、花を愛する人をより深く惹きつけたのでしょう。

彼の描く花々には「花格」というか、人間のように性格づけがされているように感じます。凛とした花、やわやわとうなだれる花、元気いっぱいの花、傲慢とも思えるほどに艶やかさを主張する花・・・・・。彼は植物と話ができて、花達がどう描いて欲しがっているのかを感じ取り、一番その花が美しくその花らしく見えるポーズで描いているように見えるのです。

今回羊皮紙に描かれた彼の肉筆水彩画が6点出品されていました。羊皮紙は紙のように水を吸わないので発色が鮮やかな一方、扱いがとても難しいのだそうです。羊皮紙の白に浮かび上がる花の姿のなんと鮮やかで優しいことでしょう。彼の原画から起こされた印刷作品も素晴らしいのですが、彼の肉筆画からは、比べ物にならないくらい強い力を感じました。絵から優しさと喜びがあふれ出ているのです。

残業続きで疲れていたのですが、美しい花や植物の姿に癒されました。絵は見るだけでいいと思っていましたが、彼の肉筆画は欲しいと思いました。この絵を身近において毎日眺められたら幸せだろうなあ・・・・と。複製なら手に入るんでしょうけどね、複製じゃなくて、肉筆画が欲しいんですよ。精巧な複製で15000円くらいですから、本物っていったいいくらするんでしょうねえ・・・・。

ばら好きの方、花好きの方、植物好きな方にはぜひお勧めしたい展覧会です。とにかく癒されます。

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