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DNAの展覧会鑑賞記録帳
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鑑賞日 2010年7月31日(土)
会 場 横浜美術館
会 期 2010年7月2日(金)~ 9月4日(土)
入場料 一般1300円、大高生800円 中学生400円 小学生以下無料
図 版 2000円

印象派とエコール・ド・パリの名品74点が出品されている。これらはポーラ化粧品二代目鈴木常司氏(1930-2000)が40年をかけて収集したコレクションであり、現在箱根仙石原のポーラ美術館に収蔵されている。

第1回印象派展が1874年に開催されてからすでに136年、印象派の作品は今や「前衛」ではなく、「古典」の仲間入りをしようとしている。何しろ明治政府の誕生が1868年なのである。印象派展が開かれたのが明治7年だから、すでに「古典」と言われてもなんの不思議もない。

今や絵画の歴史の本流と目されている「印象派」だが、19世紀当時は亜流にすぎなかった。では、本流はどんな絵画だったのか?昨年同じく横浜美術館で開催された「19世紀フランス絵画展」にみるように、アカデミズム絵画だった。フランスでは制作年代ごとに数ヶ所の美術館に収蔵している。1848年(フランス2月革命)から1914年(第1次世界大戦勃発)がオルセー美術館の守備範囲となっている。

アカデミズム絵画と印象派以降の絵画を比べると、明らかに異質である事がわかる。西洋絵画の歴史をたどっていくと、何度か異質なものが交錯する時代がある。ビザンチン様式からルネサンス様式へ、マニエリスムからバロック絵画へ、そして、ロココ・新古典主義(含むアカデミズム)から印象派へ。

この変化を踏まえ印象派以降の絵画表現を考えるとき、「近代的個人の確立」が大きなキーワードとなり、経済活動や社会権力が教会や貴族といった身分制度から解き放たれていった事で生まれてきたものだと言うことがわかる。現代人にとって、「個」であることは当然のことに思われるが、印象派の時代、それはまだ社会の中で認知される途上にあった。印印象派からポスト印象派、エコール・ド・パリという流れは、とりも直さず、社会が近代化する中で、「個人」の感性に価値を置いて行く流れそのものだったと言えると思う。

今回の展覧会では印象派に始まるフランス近代絵画の流れを見渡す事が出来る作品が集められている。恐らく蒐集した鈴木氏の趣味によるものなのだろう。とても上品で質の良い作品ばかりだ。印象派の画家に日本絵画が与えた影響は計り知れないものがある。異質なものとの出会いは変化の大きな原動力となるのだろう。印象派の作品が日本人に愛されるのは、勿論キリスト教や西欧社会が営々と培ってきた文化背景を知らずとも理解できる平明さも一因かもしれないが、構図や色彩の中に、印象派の画家たちが日本や東洋の絵画から学んだものを感じ取れるからなのかもしれない。

今回特に気に入ったのは、ルノワールの「裸婦」、オディロン・ルドンの2作品、マリー・ローランサンの「ヴァランティーヌ・テシエの肖像」レオナール・藤田の「オランダの少女たち」など。

ちょうど夏休み期間でもある。25人74作品というのは子供でも飽きずに楽しめる規模だと思う。ご家族で出かけられてはいかがだろうか?



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