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DNAの展覧会鑑賞記録帳
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鑑賞日 2010年9月26日(日)
会 場 東京国立近代美術館
会 期 2010年9月7日(火)~ 10月17日(金)
入場料 一般1300円、大学生900円 高校生400円 中学生以下無料


上村松園は日本画壇に燦然たる功績を残した画家です。その力たるや近代美人画の大家鏑木清方をして「松園の作品は自らの目標であり、裏返しても見たいほどの欲望にかられた」と語るほど。
12歳で日本で初めて開校された画学校に入学したものの、そのカリキュラムに飽き足らず翌年退学、鈴木松年に師事します。15歳で第3回内国勧業博覧会に「四季美人図」を出品、この作品は来日中のヴィクトリア女王の三男が買いあげて話題になったといいます。この時代、女性が画業を極める事は、大変スキャンダラスな事でした。松園の母は一貫して娘を支え続けます。それがどれほど困難であったかは想像に難くありません。才能溢れる松園を他の画家達は嫉妬し憎しみをぶつけたそうです。それでも、絵を描き続け、松園は73歳の時、女性で初めて文化勲章を受章しました。

今回の展覧会は17歳から晩年に至るまでの松園の作品約100点を三部構成で展示しています。

「何ものにも犯されない女性の内に潜む強い意志をこの絵に表現したかった。一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香り高い珠玉のような絵こそ、私の念願するものなのです」と松園自らが語ったように、彼女の描く女性達は本当に美しく、このような女性になりたいと思うような絵なのです。やまと絵や浮世絵の伝統に学びながら、更に生き生きとした女性達の佇まいは本当に心が洗われるようでした。

その中で、異色を放つ絵がありました。「焔」と「花がたみ」です。
「焔」は源氏物語の「葵上」の六条の御息所が画題です。何たる迫真でしょうか!嫉妬の炎に狂いながら、壮絶なまでに美しい御息所。藤の花房に蜘蛛の巣模様の袖が不自然なまでにピンと左右に張っている様は、御息所の捨てきれないプライドの高さを感じさせます。
この絵の前では大の男も女の情念の深さにビビるでしょうねえ。

「花がたみ」は謡曲「花筐」の「照日前」が画題です。まだ皇子だった継体天皇の愛し合ったものの、天皇に即位が決まり、手紙と花筐を渡されて捨てられた照日前。恋しい人を追って上京した照日の前は紅葉狩りに行幸した天皇と巡り合います。天皇は、照日前に狂って見せよと命じ、照日前は御前で狂人の舞を舞います。展覧会ではこの絵の構想を練った素描が展示されています。松園がこの題材を練り上げていく過程が見えてとても興味深いです。
狂気に囚われた照日前の目虚ろな目つきと口元が片側だけひきつりあがっているところがものすごく怖い。それでもなお美しいのです。これらの絵が描かれた時、松園は人生の大きな岐路に立っていたようです。女性ゆえの情念を描く事によって、松園は何かを乗り越えていったのでしょうか?

松園の代表作のひとつ「序の舞」は展示替えの後期出品ということで見られませんでしたが、この2作を見られて良かったです。



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