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DNAの展覧会鑑賞記録帳
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鑑賞日 2008年3月15日(土) 
会 場 埼玉県立近代美術館
会 期 2008年2月2日(土)~2008年3月23日(日)
    入場料 一般800円 学生600円
図 版 2000円

 熊谷守一の絵を知ったのは中1か中2の頃だと思う。父親が集英社の現代日本美術全集の頒布購入をはじめ、毎月画集が届くようになった。熊谷守一は萬鉄五郎と一冊になっていて、萬鉄五郎の方はあまり気にもならなかったのだが、熊谷守一の絵は非常に大きな衝撃を受けたことを今でも覚えている。
 そのころ私は野良猫を庭先で餌付けし「ねこ」という名前をつけて可愛がっていた。尻尾の長い三毛猫でなかなかの美猫だった。
 中学生の私は、其の頃は美術史なんて知らないただの絵好きの子供だった。だからこそ熊谷守一が描く猫の絵が、実に猫の姿を上手く写していることに感動したのだろう。守一様式といわれる輪郭線に縁取られた単純化された形と輪郭線の中の明快な色彩の平面に、猫の体のしなやかさ、温かさを瞬時にありありと感じとることができた。「この絵が好き!」一目でそうそう思えた。なにか憂鬱なことがあるとき、熊谷の猫の絵を思い出した。のんびりと縁側に寝そべり幸せそうに眠る三毛猫。絵を描いた熊谷守一自身のことについては其のとき何も知らないままだった。
 会社の美術好きの同僚が、「熊谷守一展を埼玉県立近代美術館でやるよ」と教えてくれたのは昨年秋だった。それから、ずっと楽しみにしていた。息子の受験も終わり、やっと見に行くことが出来のだ。
 没後30年を記念しての回顧展ということで、初期から晩年までの作品が200点近く集められている。熊谷の作品はみな小さなものばかりで、大きさで人を圧倒するようなものではない。しかし、最も初期の頃の作品から独特の空気を感じる。東京美術学校の卒業制作として描かれた自画像のまなざしに釘付けになってしまった。なんというまっすぐで透明なまなざしなのだろう。今回の展覧会の最期に画家の姿を捉えた写真の展示があったのだが、高齢になった彼のまなざしは、この自画像のまま、まっすぐで透明だった。ああ、こんな目をしているから、彼は究極の線と平面で命溢れる絵がかけたのだなあと得心した。カタログを購入したものの、やはり本物の色にはかなわないし、平面といいながら、その筆あとの残る画面は、単純な平面でもないのだ。キャプションを見ながら、「個人蔵」となっているものがとても多いことに気がついた。私は絵を見ることが大好きだが、其の絵を所有したいと思うことはめったにない。しかし、熊谷守一の絵は所有したいと強く思った。きっと、何気ない小品を手元において、朝に夕に眺められたら、きっと穏やかな毎日が暮らせるように思えるのだ。熊谷の絵は、手元に置いて、本当に毎日目の端に入れておきたい、そんな絵だと思う。
 自宅の50坪ほどの庭に繁茂する植物の中だけで30年間一歩も外に出なかったという熊谷守一は仙人にも例えられる。そんな彼だからこそ描けた絵なのだろうなあと納得させられる。会期はあと一週間だが、ぜひお勧めしたい展覧会です。
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